会員便り

南米紀行(3)

2020年4月
植木 圭二

   地球のほぼ裏側にあたる南米大陸に妻と海外パックツアーで行ってきました。本年2月下旬、南米で新型コロナウイルス感染がまだ広まる前です。南米の有名観光地数カ所を訪れましたが、今回の寄稿はペルーのマチュピチュです。

■マチュピチュへ
 インカ帝国時代に造られた有名なマチュピチュ遺跡はインカ帝国の首都だったクスコから北西方向に直線で約75kmの山の上にあります。日本に置き換えるとすれば東京からの方角と距離だけで見ると埼玉県の秩父になるかもしれません。

 マチュピチュ遺跡は標高2400mの山の上にありますが、遺跡観光の拠点はその麓にあるマチュピチュ村になります。そして村に行く唯一の交通手段は一本の線路のみで、駅には世界中から観光客が集まっています。

 
【マチュピチュ村に行くペルー鉄道の列車】
 

■マチュピチュ村
 マチュピチュ駅は列車の到着時には大変混み合いますが、普段はのんびりとした場所です。駅にはプラットホームがなく、路面電車の停留所のようで庶民的な雰囲気がとても親しみやすい感じです。
 しかし村の路地には日本の温泉街のように土産物屋、ホテル、バー、レストランなどが建ち並んで、多くの人々が往来しています。

 
【マチュピチュ駅付近】
 


【マチュピチュ村の裏路地】

 

■感動の対面
 駅からバスに乗り込み、綴れ織りの急斜面を登ります。駐車場からは木々に覆われた山道を歩きますが、標高2400mなので空気が薄く同行のガイドはゆっくりと歩いてくれます。

 そしていよいよマチュピチュ遺跡と感動の対面です。
観光客たちは皆一斉に「ウォー!」と歓声をあげて、感動を分かち合っています。それは本当に素晴らしい光景です。
 私が今まで見てきた他の遺跡とは明らかに違います。緑の芝生が生き生きとして、人々が生活しているようにさえ感じられます。何と表現していいのか迷っていると私の脳裏に浮かんだ言葉は“空中都市”です。

 
【マチュピチュ遺跡全景 背後はワイナピチュ山】
 

■ワイナピチュ山
 空中都市の背後にそびえているワイナピチュ山もきれいに見ることができます。この山はマチュピチュ遺跡の写真には必ずセットになったように登場します。なぜセットになっているかというと、標高2700mの頂上付近にも段々畑と遺跡があるからです。あんな急斜面の山に石を運び積む作業は大変だったでしょうが、それが500年以上経過しても崩落せずに残っていることがまた凄いことだと感動します。

 この山には入山制限があり1日400人までしか登れません。非常に人気があるので世界中から予約が殺到してチケットの入手だけでも困難だということです。

 
【ワイナピチュの山頂付近】
  ■空中都市に入る
 空中都市には城壁があります。その城壁にはもちろん入口があって、そこから空中都市の市街地に入ります。入口の壁には簡単な扉かカーテンのようなものを掛けた穴が残っています。

 市街地から先ほど感動した全景を見た場所の方を見ると段々畑が広がっています。見事な段々畑は、高さも広さも角度も私が思っていたレベルを超えています。よく高い急な斜面にこの段々畑を作ったと感心しきりです。
 
【市街地入口 内部からの撮影】
 
【見事な段々畑】
 

■空中都市の謎
 ガイドの話では、この空中都市は人々が生活するための都市ではなく、王族の離宮的な意味合いで造られたといいます。そのために宮殿や神殿の周囲に王族の生活を支えるお付きの者の部屋があり、王族と近い距離で寝食を共にしていたといいます。インカ帝国には身分制度も奴隷制度もなかったので、皆で助け合って仲良く暮らすというのがインカ帝国のスタイルなのでしょう。

 離宮なのでこの都市の収容人数はせいぜい数百人で、王族不在時はもっと少人数になったといいます。
市街地には水路が張り巡らされて16の水汲み場、広場がありその隣に主神殿、その他に王女の宮殿、コンドルの神殿などがあります。

それにしてもなぜこんな山の上に都市を造ったのか、ガイドは太陽信仰なので神に近づくためと説明してくれますが、どうも私は納得できません。

 滅んだ理由もよくわかりません。インカ帝国最後の皇帝がスペイン人に処刑された情報はここにも届けられたことは容易に想像できますが、幸いにも険しい山の上にあるのでスペイン人に発見されずに済みました。しかし空中都市は閉ざされ、1911年に発見された時は草に埋もれた廃墟だったということです。そこから発掘された骨はほとんどが女と子供だけだったというから、男たちは仇討ちにクスコに行ったのでしょうか。

 
【空中都市の内部】
 
【左が主神殿 右がメイン広場】
  ■草刈り担当はリャマ
 遺跡の所どころでリャマが迎えてくれます。リャマはアンデスの山に住む動物でアルパカやビクーニャなどと並んで草食の大人しい動物です。

 ガイドが言うには草食のリャマは遺跡の草刈り担当で、飼育小屋もあり全てのリャマには名前がついています。このリャマたちがこの空中都市の生き生きとした緑を守っているわけです。
 
【草刈り担当のリャマ】
  ■クイとアルパカ
 昼食は、ここでしか食べられないという面白いに料理を注文することにしました。
クイという動物の丸焼きで、クイはネズミの一種で日本では天竺鼠(てんじくねずみ)という名前で知られています。
運ばれてきましたクイは恨めしそうに見上げており、さすがに目線を合わないように皿を少し回してナイフを入れ人生初のクイの肉を食しました。食感は脂肪がほとんどなく肉厚も薄いので硬く、良く焼いてあるので皮はパリパリです。味付けは照り焼きのようです。

 そしてアルパカの肉料理です。アルパカは丸焼きでないので見た目は何の肉か分からないですが、食感は鶏のムネ肉に似ており脂身もなく柔らかくて、これはかなりいけます。
ついでにペルーの国民的飲み物のインカコーラもなかなかいけます。ただし味はコーラの独特の薬のような味ではなく、単にやや甘い炭酸水です。
 
【クイ(天竺鼠)の丸焼き】
 
【アルパカの肉料理】
 
【インカコーラ】
   今回はマチュピチュを紹介しましたが、次回の寄稿ではイグアスの滝を紹介いたします。

尚、この詳細は「旅のチカラ研究所」のホームページの中で旅行記「南米の旅2020」として公開しています。是非ご覧ください。

   南米紀行(1)はこちら  南米紀行(2)はこちら

 
 
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