会員便り

南米紀行(2)

2020年4月
植木 圭二


   地球のほぼ裏側にあたる南米大陸に妻と海外パックツアーで行ってきました。本年2月下旬、南米で新型コロナウイルス感染がまだ広まる前です。南米の有名観光地数カ所を訪れましたが、今回の寄稿はペルーのクスコです。

■高地の文明
 南米大陸の東側はアマゾン川やラプラタ川などが流れており比較的平らな土地ですが、西側には標高6960mのアコンカグア山を筆頭に6000m級の山々が連なるアンデス山脈があります。

 そのアンデスのあちこちに紀元前から人々が住みつき始め、各地に文明を築いてきました。それらは総称としてアンデス文明と呼ばれています。

 
【アンデスの山】
 


【アンデスの風景】

 

■インカ帝国の繁栄
 15世紀にはアンデス文明の中心的な国家が誕生しました。80の民族、1600万人の人々が暮らしたインカ帝国です。その首都だったクスコは標高3400mという高所で、富士山でいえば9合目辺りです。ただ過酷な自然環境ではなく比較的過ごし易い都市です。
 インカ帝国は高度な文明なのに簡単に侵略され滅ぼされました。理由としては、武器は石器やこん棒という貧弱なもので基本的に戦いを好まない民族だったようです。鉄や車輪も馬もおらず、リャマやアルパカはいますが動物に乗る習慣はなかったようです。
 この文明には文字がないので、遺跡が物語ることは非常に高度な建築技術で石組みはカミソリの刃一枚も入らないと言われています。

 
【インカの石組み 台形の入口、窓】
 


【インカの石組み 窓の向こうにも窓】

 

■インカ帝国の滅亡
 1532年にスペイン人のフランシスコ・ピサロの一行168名が到来しインカ帝国の皇帝と対面し、騙し討ちによって皇帝は捕虜にされました。そして皇帝はピサロと釈放交渉をし、彼が幽閉されていた大部屋1杯分の金と2杯分の銀を提供しましたが、ピサロはこの身代金をもらっても約束を反故にし、結局皇帝は翌年処刑されてインカ帝国は滅びました。
全ての財宝は持ち去られ主要施設は破壊され、キリスト教への改宗と植民地化が徹底的に行われました。

 現在のサント・ドミンゴ教会はインカ帝国の「太陽神殿」でしたが、征服者のスペイン人がこの太陽神殿に入った時は夢のような黄金の世界が広がっていたといいます。

 それらの黄金は今私たちが想像できる量を遥かに超えるもので、その黄金を全て持ち去り神殿を破壊して、スペイン様式でこの教会を建てたので中庭はスペインのアルハンブラ宮殿にどことなく似ています。尚、石組みの一部が残っているので前項で紹介しています。

 
【サント・ドミンゴ教会の中庭】
 

■アルマス広場
 クスコの市街地の中心はアルマス広場です。リマにもアルマス広場がありましたが、アルマス(armas)とはスペイン語で武器という意味なので、スペイン人は征服者の象徴として武器をかかげてペルーの至るところにアルマス広場を造りました。

 アルマス広場周辺にはスペイン建築のカテドラルや教会がありますが、これらの建物もインカの神殿や皇帝の宮殿を壊して建てられたものだそうです。

 
【アルマス広場 ヘスス教会】
 
【アルマス広場 中央】
 
【アルマス広場 カテドラル】
  ■街にも石組み
 クスコは街全体がユネスコの世界遺産に登録されています。インカ帝国の見事な石組みの上に広がるスペイン建築が作りだす独特の美しい街並みが評価されたといいますが、侵略と破壊という歴史的事実の上に成り立っています。

 街を歩くと至るところにスペイン建築の中にインカの石組みが残っています。同じインカ時代でも少しずつ進化しており、太陽神殿は最終形でそれ以前は外観が凸凹した石組みが多いようですが、それでもカミソリの刃一枚というこだわりは貫いています。
12角の石という名所があります。石組みは4角形だけかと思っていましたが、12角の石でも隙間なく詰まっているのが特徴のようです。これは意図的なのか偶然なのか私には分かりません。
 
【クスコの街の中にあるインカの石組み】
 
【12角の石】
 

■フォルクローレ
 昼食のために案内されたレストランでフォルクローレを何曲か演奏していました。フォルクローレはスペインとインカの融合によって生まれた音楽で、ギターはもちろんスペインからきた楽器で、笛はアンデス生まれでケーナやサンポーニャが有名です。

 あの名曲「コンドルは飛んでいく」も演奏してくれました。コンドルは南米では貴重かつ象徴的な鳥でいくつかの国の国鳥になっていますが、絶滅危惧種でもあります。

 
【レストランでのフォルクローレ演奏】
   今回はクスコを紹介しましたが、次回の寄稿ではマチュピチュを紹介いたします。

尚、この詳細は「旅のチカラ研究所」のホームページの中で旅行記「南米の旅2020」として公開しています。是非ご覧ください。

   南米紀行(1)はこちら

 
 
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