会員便り

ピースボート南半球世界一周の船旅の覚書
(2013年11月22日〜2014年3月6日)

平成27年1月
                        山中 昇

 

始めに

 1976年4月1日に松下電送機器株式会社に入社し、2008年5月30日にPCCを退職した山中です。
32年間お世話になりましたが、2008年7月1日から、別の会社で働きながら、自宅で個人事業主として働いております。

 2013年11月22日から2014年3月6日にかけて、105日間、南半球世界1周の旅をしてきました。
そのときの感想をまとめた資料があります。

 第1章から第7章までありますので、毎回1章ずつ、計7回で紹介したいと思います。人生観が変わるほどの貴重な経験でした。 皆さんもチャレンジなさってはいかがでしょうか

 

第1章<乗船について>はこちら

第2章<船内生活>はこちら

  第3章<船内は社会の縮図>
 

 食事のときに様々な人との出会いと会話がある。内輪だけでパーティーをするなどの特別な事情がなければ席順の自由はないが、これのおかげで毎回、知らない人たちとの出会いと会話が楽しめる。

・初対面ではお通夜になりがちなので、私は大概、テーブルに居る同席者に対して一番に声をかけることにしている。「どこからいらっしゃったのですか? 初めての乗船ですか? 今日のツアーはどれに参加なさったのですか? 今日は暑かったですね、アクセントで判断するとご出身はひょっとしたら名古屋か中国地方ですか?」などと口火を切ると、途端に会話がはずむ。

・そそくさと退席する人も中にはいるが、大概の人は会話に参加して楽しむ。こうして得た情報の中でさらに聞きたい人が居れば個別に声をかけ、一緒に食事しながらもっと詳細な経験談を聴くことを繰り返した。おかげで陸上では接することがないであろう人たちから豊富な経験談を聴くことができ、感動や勇気を得ることがしばしばだった

  9階ビュッフェ 室内
 

全国から集まった人

•船内には北海道から沖縄まで様々な人が全国から集まっている。こういう場所では同県人というだけで親しくなるから不思議だ。船内では度々、同県人会が行われている
びっくりしたのは、「慶応出身者集まれ!」、「立命館出身者集まれ!」という伝言板であり、属性による仲間意識は尽きることがないようだ。私の出身校の集まりがあっても私は出ない。船の中で学閥をひけらかすのは鼻持ちならず、いやらしい

世代間ギャップ

•30歳以下は100人くらいなのに対して、65歳以上は500人を超えると思われる。船内で様々な行事があるが、若い人は若者だけで集まることが圧倒的に多く、世代間の触れ合いがほとんど見られない傾向にある。「船内家族」というものがあり、船内で擬似家族づきあいをするのだが、傍目にぎこちない印象がある
船内バーベキュー大会があったが、集まって飛んだりはねたりして大騒ぎしているのは若者だけ。その中には中高年は決して入れず、遠巻きにして見ているだけだ。世代間のギャップを埋めるのは至難の業だ

学校の先生や看護、介護の仕事をしていた人が多い

・ 船内で知り合った人の多くが、元、学校の先生や看護婦、介護をやっていた人だ。活発で多彩な人が多く、組織力もあって船内活動をリードしている

船内地獄耳

・閉ざされた空間にある船内ではうわさが絶えない。特に男女の関係については何かとうるさい。でも、これは陸上と同じだ。夫婦のように見えるが実はそうではなく怪しい関係だとか、船内で誰と誰がくっついたとか、離れたとか、どれがいい男か、いい女かという品評も盛んだ。

・4人部屋では、仲の良いグループ、誰も口を利かないほど敵対関係になったグループなど様々だ。うまくいかないグループでは、ものを隠されたり、洗濯時間や電気を使う時間が少しでも長いと文句を言われたり、線を引っこ抜かれたりなどの意地悪をされるといった話が面白おかしく増幅され、船中に伝播される

・船内で誰かが体調を崩すと、あっという間に話が広まる。食堂や船内企画の場所で会わなくなるからだ。カップルの一人が病気で寝込み、1人だけの時が目立つと、夫婦喧嘩したのだろうかとか、憶測と噂が喧しい。2人部屋や4人部屋の人がインフルエンザで1人部屋に隔離されると差額料金をとられるそうだ。でも、これは、保険で処理できそうだ

  9階ビュッフェ 屋外
 

奉仕の心

•船内には誰に頼まれたのでもないのに、手間隙かけて材料を用意して持ち込み、和紙や着物の布などを使った伝統的な工芸品を作るサークルを開いている人が複数居られる。中には、材料費の負担を申し出ても断わるケースもあり、心が和む光景だ。こうしたことが縁で、下船後も交流しているようだ

・80歳くらいでこれが最後のつもりで乗船した女性の中には、船内で知り合った人に自分が大事にしているものを無償で与えることを喜びとする人がおられ、これもほほえましい光景である


助け合い

船内には高齢者が多いが、この人たちにとっては、風の強い日など、デッキに出るドアの開け閉めが大変だ。指を詰めたりする事故につながりかねない。そんな時、誰かれ構わず親切にドアの開け締めを手伝う人が多いので心がなごむ。人に親切な人が多いのだ
オプショナルツアーでも、足腰の悪い人が多数居るが、手を差し伸べたりして親切にしている光景が目立つ。私も、機内で椅子から立ち上がるときに苦労している人の手を支えたり、荷物を上げ下げするのを手伝ったり、込み合ったボートに乗ったときなどは私の親くらいの人に席を譲ったりしている
前述の船内の医療体制を反映して、困っている人が居ると、ただで薬の融通をするなどのほほえましい好意が盛んに行われている。

挨拶

・船内の階段、通路、エレベーターなどですれ違うとき、見知らぬ人でも軽く会釈したり声をかけたりして挨拶を交わす。都会ではありえない光景だ。船の中で時間と空間を共有するから、一つの共同体として隣人としての意識が生まれ、人に優しく親切になれるのかもしれない

・全体として、若い人はすれちがっても挨拶をしない人が多い。この違いがどこから出てくるのか調べてみたい気もする


  真っ青な大西洋
 

忘れ物、泥棒

•1000人近く乗客が居て、しかも高齢者が多いときては、忘れ物や紛失物が多くなる。船内の忘れ物はレセプションに届けることになっているが、隔週ペースで届けられた品物の展示がなされる。ペットボトルなどもあり、乗船客の質の高さを物語るものがたくさんある反面、紛失物が出てこないケースもある。陸上でも同じことだから驚くにはあたらない。
もう一つ面白いのは、展示コーナーを見ていると、無くしたという人が、しばらくすると、「部屋のどこそこにあった」というケースが結構目に付く。船内で泥棒にあったという声もたまに聞かれるが、割り引いて聞くべきだ

水漏れ事故

・パイプの破裂と思われるが、6階や7階の一部の部屋が5センチくらい浸水し、床に置いていたカバンなどが水浸しになったと聞いた。この種のトラブルは頻繁にある様子だ

・船は、乗っている総人数が1300人くらいで、部屋だけで500くらいある大型のホテル並みだ。その設備の維持が大変なことは想像に難くない


室内トイレとシャワー

・洗面台、トイレ、シャワースペースが一体になったつくりである。シャワーは水流がかなり強くまで調整できるし、シャワーヘッドが自在に動かせる形なのでと言うので、子供が夏に行水するビニールのプールを持ち込んで使っているとのこと。水を浸して洗濯のたらいに使えるので便利だそうだ

洗濯

・部屋で洗ってタオルに巻いて絞って水気を取ってから部屋に干せば1日で乾く。シャワーを浴びるたびにそうしていたが、船内でローンドリーサービスがあり、大きな袋に一杯になるまで突っ込んで一袋で350円だとわかり、浴衣などをまとめて出すようにしている

  餅つき大会 真夏の南半球太平洋
 

船内売店

・駅のプラットフォームにある小型のコンビニのようなものがあり、船旅に必要な最低限のものが置いてあり、9時から20時まで開いていて便利だ

・船内で何か報せがあり、売店で買えるとわかると殺到して在庫がなくなるので、早めに買いに行く習性がついてしまった

・飲料の自動販売機も24時間動いており、コーヒーやジュース、スポーツ飲料などが買える。アルコールもビールを中心に一通り買えるので、バーが閉まっていても飲めるから便利だ

・あちから知ったのだが、数万円出して予約すれば、冷蔵庫を貸してくれるらしい。タヒチの市場で調達したマグロの切り身を入れておき、酒を飲みながらたらふく食った人が居ると聞いた

・料金を払えば、トイレをウオッシュレットにしてくれるそうだ。トイレの隣がシャワールームなので、私は、便のあと、シャワーで尻を洗っていた。水流がものすごく強いので、快感があり、くせになった

海賊騒ぎ

・モーリシャスを出てマダガスカルに向かう途中のインド洋では、夜間に灯火管制が敷かれ、デッキは外出禁止、部屋のカーテンを閉めることも厳重に義務付けられた。ソマリアから出てくる海賊に見つからないための措置だそうだ。

美容室
・船内には美容室があり、美容師1人が担当している。予約制。かなり先まで予約がとれない。お正月前は特に込んでいたようだ

・料金は陸上の2-3倍というところだろうか、男性のカットだけでも3150円、船内には美容師が乗客として数名乗っており、口コミで散髪してもらう人が居るようだ

サウナ
・10階にサウナがある。男女別々。90分700円と高い。1月始めに、特別キャンペーンで500円に割引する通知が出た。多分、閑古鳥が鳴いていたのだろう。500円なら行ってみようかという気になるから不思議だ。これが「値ごろ感」というものか

針灸治療
・10階サウナの隣に針灸治療が受けられるコーナーがある。完全予約制。うまい人らしく、評判は上々だが、値段が高いのが気になる(1回1時間8000円)

バーとアルコール
・船内にはバーが数箇所あり、カラオケとダンスが楽しめるバーもある。お酒は何でもあるし、真夜中まで開いている。アルコールは自動販売機でも24時間買えるが、陸上の倍の値段

・バイーアというバーはバンド演奏で踊れるようになっており、毎晩、5組くらいのカップルが踊りに来ている。メンバーはいつも同じ。日によっては、カラオケタイムもある

・ケープタウンで各国のビールをしこたま仕入れたようであり、1月3日までお正月特別割引価格が適用されたが、2月15日までその特別価格が適用された。きっと在庫になったのだ


  ラウンジでエアロビクス練習
 

船内バースデーパーティー

・船内で誕生日を迎える客には、船から小さなバーデーケーキとカクテル1杯無料の券が配られる。メインレストランではそのケーキが出され、クルーがハッピーバースデーを歌って祝ってくれるサービスがある。元旦生まれの私は、船内で毎日世話になっているカルチャースクールの先生や、旅や生き方などで感動と勇気を与えてくださった人たち、総勢16名を招待し、大きなケーキとシャンペンなどのアルコールを振舞う形で感謝会を開いた。一人を除いて全員来てくださったのだが、都合で参加できなかった方は達筆で色紙を書いて席までわざわざ持ってきてくださり、感動した。

・不思議なことに、元旦の誕生日が14人も居て船内で一番多いと聞いた。多分、前後に生まれた人は、親が元旦として届けたのだろう。私の場合は正真正銘元旦だ。除夜の鐘を聞いていると陣痛が始まり、昭和28年の初日の出の時刻に生まれたので「昇」と命名したと聞いている(日出男も候補だったそうだ)

プールとジャグジー

・船のデッキにはプール(海水)が3個とジャグジー(真水を温泉並みに沸かしている)が3個あり、天気がいい日には一日中楽しむことができる。まるで、リゾートビーチに居る感覚が楽しめる。横浜を出て赤道を越え、ケープタウンに行くまでに日焼けし、顔の皮膚が1枚むけたくらいだ。色の黒さでは船内でも有数だ
・8階のジャグジーは水温が40度近くまで温められ、温泉気分が楽しめる

船内新聞

・船内では、毎日、新聞が発行される。夜の8時頃に5階レセプションと8階事務局前に詰まれるので各自で取りにいく。翌日の日程表と日程のハイライトが紹介してある。また、毎日1人ずつ乗客にインタビューして紹介するコーナー(タイトルが一期一会、450字)がある。私も2月3日号で紹介された

・日程表は分刻みであり、関心がある企画にマーカーなどで印をつけて一日の時間の過ごし方を決める。何事にも積極的な人は朝から晩まで、ご飯をゆっくり食べる暇もないほど駆けずり回っている

電力事情

・船内では、240ボルトが用意されているが、実は、洗面台の隣に据え付けられているドライヤーの本体にある小さな窓を開けると、230ボルトと115ボルトの差込が用意されている。115ボルトはシェーバー専用と書いてあるが、多分、ほとんどの日本の製品がそのまま使えると思う(電力消費が大きい器具はダメかもしれない、ショートしてフロアー全体が停電になったりしたら面倒なので、実験はしていない)

・船内のあちこちから聞こえるのが、100ボルトの日本製電気器具を(差込形状)変換プラグをつけて240ボルトの差込口にそのままつないで壊れたという悲劇だ。部屋の240ボルト差込口は2本の○ピンタイプだが、それに合う変換プラグだけ用意して事が足りると誤解していることに原因がある。電気器具本体も100〜240ボルト対応でなければならない。100ボルトの電気ポットの場合は、コイルが焼ききれるまで使えるが、2週間くらいは使えるケースもあるが数日でだめになっても不思議ではない。電子部品を使っている最新の高級タイプドライヤーなどは1発でパーだ

・パソコンやデジカメ、携帯電話などは基本的に100〜240ボルト対応になっているので心配はないが、充電器が100ボルト専用のものを日本から持参した人も多く、貸し借りが盛んだ
・パソコン本体は240ボルト接続で問題なく動くが、外付けのDVDドライブは頻繁にアラームが出て停止する。「大きな電流変化があった」ために起こるようだが、どうやら、船内の電圧変化が大きいようだ         

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伴侶の膵臓がん闘病記です、国民病と言われるがんの実録ですので、多くの人にとって参考になると思います
 
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