会員便り

旅のメモ:欧州1周フライト&クルーズ
第4回

平成29年9月
                        山中 昇

  2017年5月7日から6月7日までの1か月、欧州1周フライト&クルーズを経験しました。
 
  ■旅の点描
   船内では、様々な自主企画があります。それぞれの得意分野を活かして、小集団活動が盛んです。朝5時から社交ダンス、6時半からラジオ体操を主催している70代後半と思しき男性が居ます。練習しに来ている女性をつかまえて「なぜ、俺が教えたとおりに踊らないのだ!」とどやしつける姿がとても見苦しく、周囲を嫌な雰囲気にします。ひとりよがりの典型です。

 夜の食堂で隣り合わせた人とそういう話をしていたら、隣の隣がその男性だったと後になってわかったのですが、我々の会話を黙って聞いていました。素人に毛が生えたくらいの力量で偉そうにする心の狭い爺さんですが、多分、家庭でも地元でも、実力がないのに自慢しいで、誰からも相手にされないので、船の中で偉そうにふるまっているのでしょう。本当に分かっている人は、控え目で、人にも丁寧に接します。

 台湾から乗っている中年男性が、朝6時から1時間の気功の練習のリーダーをやっているのですが、偉そうなところが微塵もありません。その姿勢に感動して、毎朝欠かさず参加していました。下船前に筆談し、感謝の気持ちを伝えたのですが、人間の器量は国籍を超えて、誰の目にも明らかです。

   
  ■船内で知り合い、下船してもコンタクトを続けたい人々:その1
 

 アテネ市内と中部ギリシャのホテルで2泊同室だった横浜の男性(3歳年上)と仲良くなり、船内でも親しくつきあっていました。定年退職の前から週末に山歩きをしていたそうです。健康的で充実した定年後を過ごしておられます。下の写真の手前の男性です。ほかの二人はその人と同室の人。女性は、3年半前に乗った時に知り合った人ですが、今回も一人で乗っておられました。

 18歳の時にハワイ経由でアメリカに渡り、50年間、アメリカや太平洋の島々でホテル業界の仕事をし、アメリカ国籍を取得し、グアム島に居を構えながら、日本にもマンションを購入し、これからは日本での滞在時間を増やしたいと語っておられる男性との会話がはずみました。私が経験したことのない事物の話を聞くのがとても新鮮でした。下船してもコンタクトを続け、グアム、日本共に遊びに行くことを約束しました。

   
 

■船内で知り合い、下船してもコンタクトを続けたい人々:その2

 

 羽田からドバイの機中で隣り合わせた女性2名はお友達で、相部屋で旅行です。世界を冒険する旅のクラブで知り合った仲で、一人は、自転車で外国を走る経験をたくさんしておられるようでした。トルコからユーゴスラビアを経由してイタリアに行ったり、フランス・スペイン国境から、スペイン北部の巡礼道を自転車で800キロ踏破したなどのつわものです。

 ドバイからアテネの機中で隣席だった女性は76歳ですが、若く元気そのもので、60代後半でもおかしくありません。明るく、何事にも前向きで、世界中を旅しておられます。船内でも、講演会、飲み会、ヨガ教室、水彩画教室などで忙しくしておられました。

 宮城県出身の70代半ばの女性がおられます。夜、空いているレクチャールームで日本舞踊を練習しておられたので声をかけたところ、公務員を退職後の人生について伺うことができました。たいへん前向きな生き方をしておられます。東京方面に来られたら声をかけてくださいとお願いしました。

 十和田湖に近い秋田県北部の町から参加した78歳の男性と知り合いました。5月25日が誕生日だったので、夜の船内食堂で誕生祝をしました。地元で週3回発行の地方紙を発行しておられます。タイ北部の貧しい農村で子供たちを学校に行かせるボランティア活動を続けておられ、その生き方に感動しました。さらに、新聞記者だけあって、通常では得られない情報を多数もっておられ、モノの見方もたいへん参考になりました。自分はまだまだ勉強が足りないことを思い知らされた一人です。日本で再会し、その後のことなどをお聞きしたい人の一人です。

 
  ■船内で知り合い、下船してもコンタクトを続けたい人々:その3
 

 東京から乗船なさった夫婦は、年齢が私と近く、親しみやすい人たちです。この二人は、3年半前の南回り世界1周と今回の北回りに乗船なさったのですが、同じ船に2回連続で乗り合わせたのも不思議な縁です。今年だけでも既にスペイン、ロシアに旅で出かけ、下船後はアメリカにも旅するとのことです。ストックホルムからノルウェーに鉄道で移動するオプショナルコースに申し込んでおられ、2人で人生をとことん満喫しておられる、うらやましい夫婦です。都内のご自宅と八ヶ岳にある別荘への訪問も約束しました。お二人のような素敵な人生の過ごし方が実現できるように、私に似合いの女性を紹介してくださいとお願いしました。

 上海出身の中国人ですが、日本に40年も住んでいる男性と仲良くなりました。アメリカ株で儲けたそうであり、配当だけで年間600万円入り、保有株の価値は10億近く、お金の使い道に困っているようでした。風変わりな人ですが、私に無い面を学べそうであり、都内の自宅に訪問するなどの付き合いを続けることを約束しました。

 都内豊島区在住で前回の旅でも一緒だった70代の女性は歌が好きで、船内カラオケや歌声グループに欠かさず参加していました。豊島区にはカラオケ設備がある公民館が20か所あり、そこを最大限に利用しているそうです。
 アルカイダというあだ名の、ウイグル人と間違えるような風貌と体裁の70代前半の男性は12回目の乗船ですが、生き方・ものの見方で参考になる点がありました。

 大阪の「てっちゃん」は83歳ですが、確か、9回目の乗船です。前回乗船したときも一緒であり、何事にも興味をもって参加する明るい老人です。前回はエアロビクス教室でいつも最前列に陣取り、足をばたつかせていて人気者でした。今回はサルサの練習に参加しているそうです。大阪で不動産業をやっておられ、今は「息子の代」とのことですが、今回は「浪速のトランプ」というニックネームをもらいました。正に、人生を謳歌しておられます。

   
  ■船内で知り合い、下船してもコンタクトを続けたい人々:その4
 

 船内で英語だけの講演会がありました。ロンドン大学政治経済学院の政治学者が、選挙民の行動を研究しておられるのですが、大変興味深い内容でした。40分の講演の後に質疑応答の時間があったので、講演内容について私が理解したことに関連した4点の質問をしたのですが、丁寧に答えてくれました。

 近くに座っていた日本人男性も手を挙げたのですが、時間切れでした。夜、甲板ですれちがったときに声をかけられ、場を移して、1時間以上、お話を伺うことができました。82歳とのことでしたが、頭脳明晰、立て板に水、通常ではありえないその博学と、人脈の深さ(歴代首相と直接会ったり、G8サミットに参加資格があるなど)に驚き、私から先に名刺を出して、相手の名刺を頂戴したのですが、日本放送協会会長、日本グローバル戦略研究会代表、G8サミットリサーチグループ、ロンドン大学政治経済学院国際政治経済フォーラムなどの経歴が満載であり、驚きました。

 翌日、再会した時に、前夜の話に出てきた60年前に某雑誌に書いた巻頭言のコピーを渡してくださいました。その内容は今現在使っても何の違和感もないすぐれものです。私は、このようなすぐれた人物と会話できるような人間ではないのですが、下船後もお付き合いを続け、卓見をうかがい、少しでも目を開くことができたら幸せだと思います。それにしても、船内にはとんでもない人が居るものです。

   
  以下、次回に続きます
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