会員便り

旅のメモ:欧州1周フライト&クルーズ
第3回

平成29年8月
                        山中 昇

  2017年5月7日から6月7日までの1か月、欧州1周フライト&クルーズを経験しました。
 
  乗船の背景と船内生活:その4
 

 5月16日夕方に突然38.2度の高熱が出ました。前夜、シャワーを浴びて出てきたら寒くて震え、夜中にくしゃみと鼻水がとまらなかったので兆候はあったのですが、こういうときはいつもアルコールをひっかけて布団をかぶって寝ると大汗をかいてすぐに治るのでそうしたのですが、1時間後に測ったらなんと39.9度! 私の平熱は35.5度です。放っていたら命に係わる高熱なのですぐに医務室に行きました。

 まず、インフルエンザのチェックをしたのですが、陰性でした。熱さましの頓服を出してくれたので飲んだら、朝までに35.5度まで下がりました。4錠目を飲んだら、33.9まで下がったので服用を中止しました。

 聞いた話ですが、船内でインフルエンザとわかると、隔離部屋に入れられます。部屋代の差額分は請求されるそうです。船内医務室は初診料が4000円、インフルエンザチェックキットが2400円、頓服が350円、計6750円です。船内で1000円出して診断書を書いてもらえば日本の健康保険が適用されるそうです。

   
  乗船の背景と船内生活:その5
 

 5月25日昼前に船内放送があり、急患(事情通から、脳梗塞だったと聞きました)救助のために臨時に最寄りの港に停泊するとのことでした。

 しばらくすると、ヘリコプターが来るという訂正放送があったので、10階甲板に出て、ヘリが近接し、離れるまでの一部始終を見物しました。

 時速30キロで航行する船に並走してヘリが甲板上からタンカに乗った急病患者と看護師1名を吊り上げる作業は手際よく、見事でした。

 ヘリが去った後、周囲の人の会話が聞こえました。この料金は誰がどのようにして払うのだろうか。患者が全額払うのでしょうが、旅行傷害保険に入っていないと、最低でも数百万円単位の支払いになると思われます。命には代えられませんが、高い旅行です。

 

船の10階甲板
  老人の船 その1
 

 これは、船内で事情通から聞いた話ですが、船内で実際に遭遇する環境と大差はないので、事実に近いと思います。

 乗客が1000人、クルーが300数十人(様々な国籍ですが、最大はインドネシア人)。乗客の内、30代までの若い人が150人、60代以上の中高年が850人ですが、中高年の平均年齢は70歳くらいのようです。

 戦後すぐに生まれた団塊の世代で、時間もお金も余裕があり、健康な人たちが主たる客層であることは間違いなさそうです。女性が6割、男性が4割。単身で乗っている人が7割。例えば、単身で乗っている平均年齢70歳くらいの中高年の女性が350人くらいは乗っている計算になります。

 単身と言っても、夫婦のどちらかが日本に残っているケースが大半であり、伴侶が死別して一人で乗っている私のような者は少数派のようです。

 それでも、船内で臨席し、話をする中で、伴侶と死別して5年以上経つ男性が4人乗っておられました。一人は、亡き奥様の写真を常時携帯しているそうです。

   
  老人の船 その2
 

 私の右隣の部屋の男性は、最高齢で91歳。介護用の乳母車を押し、大きく腰を曲げて、下を向いてとぼとぼとやっと歩く状態です。以前は、右も左も杖を突いていたのですが、転倒しても自力では立てない状況であり、先日、早朝、エレベーターホールでうつぶせになってもがいていたところを私が通りがかり、抱きかかえて直立させました。その後、寝たきりの状態になり、船内の医務室の女性が来ていましたが、下(しも)の世話もできない様子でした。

 噂では、近々、介護付きで乗船させるコースも用意するようです。そうなれば、正に「動く(浮かぶ)介護付き老人ホーム」です。3年半前に乗った時は、92歳の元気なお婆さんが、娘夫婦と乗っておられましたが、面倒見てくれる人と乗るのが常識だと感じます。そうでないと、旅行社にも、乗船者にも迷惑をかけることになります。

 多数の老人が乗っていることは事実ですが、食堂などで一緒のテーブルに着いた86歳のご婦人は一人で乗っていましたが、心身ともに元気そのものです。正に、模範的なおばあちゃんです。とてもほほえましく、勇気づけられました。

 ほかにも、87歳の元学校の先生で、今でもアメリカの町との姉妹都市縁組活動で活躍しておられる女性などがおられ、素敵な老後の過ごし方を学ぶことができたことは大きな収穫でした。

   
  以下、次回に続きます
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