伊豆大島紀行
2025年4月
植木 圭二
3月末、伊豆大島に社友会の仲間と1泊2日で行ってきました。伊豆大島は近くて手軽なのにもかかわらず非日常の旅が味わえます。
この紀行を参考に行ってみてはいかがでしょうか。
█ 伊豆大島へ
今回の旅は社友会の仲間2名と一緒です。彼らの出身地は大分と広島なので関東の島はあまり詳しくありませんが、
私は伊豆大島に20回以上行っていますので案内役に徹することになりました。
私たちは東京竹芝桟橋からジェット船に乗り込み、伊豆大島に向けて出港します。
この船は水中翼で海上を滑空するので時速80kmも出て、そのため1時間45分で大島に到着します。
港でレンタカーを借りると、東京都なので品川ナンバーです。それが珍しく2人は写真を撮りまくっています。
私も初めてこの島を訪れた時には車のナンバープレートの写真を撮っていたことを思い出しました。
そして約50kmの大島一周道路で島巡りに出発します。

【今回借りた品川ナンバーのレンタカー】
█ 伊豆大島リゾートゴルフクラブ
私たち3人はゴルフ好きでもあり、まずはゴルフ場を見学に訪れます。2人は「この島にゴルフ場があったの!?」と驚いています。
ティーグランドに立つと、そこからの眺めは最高です。まさしく非日常のリゾートゴルフを味わえます。
フロントで料金を聞くと、平日のプレー費は約1万円とのことでした。2人は「東京都のゴルフ場でそれは安い!」とこれもまた驚いていました。

【大島リゾートゴルフクラブの1番ホールティーグランドから見た景色】
█ 黒い砂浜
「弘法浜」という海水浴場に立ち寄ります。2人は「これ何!真っ黒な砂浜だね」と言って、砂の色に驚いています。
伊豆大島は火山活動で出来上がった島なので、海岸の砂も溶岩が固まった岩と同じ色をしており、
初めて来た人は黒い砂浜の海水浴場に驚くのは当たり前かもしれません。

【弘法浜の黒い砂浜】
█ バウムクーヘン
伊豆大島は太古の昔から噴火を繰り返して噴出物が積み重なってできています。
その証が島の南西部の海岸線にある「地層大切断面」で、地元では“バウムクーヘン”の愛称で親しまれています。
バウムクーヘンは高さ約30mで約800m続いており、1953年に大島一周道路建設中に出てきたものだと説明看板に書かれています。
つまりこの世に出現して約70年にもなり、それはちょうど私たちと同じくらいの年齢で、実に頼もしく太平洋に対峙して威風堂々とそびえ立っているように感じます。

【地層大切断面】
█ 波浮の港
島の南端にある「波浮の港」は火山噴火によってできた天然の良港で、遠洋漁業の基地としてかつては多くの漁船が出入りしていました。
波浮の港は都はるみの大ヒット曲「アンコ椿は恋の花」で歌われた港で、港を臨む高台にその歌碑が建っています。
以前、私はこの場所に20代の若者を連れてきたことがありますが、そもそも都はるみを知らないので、説明に苦慮したことを思い出しました。
しかし今回の2人は都はるみをよく知っていました。

【波浮の港】
█ 伊豆の踊子
波浮の港には漁師たちが泊まり宴会をしていた「旧港屋旅館」があります。現在はその役目を終えて観光客に無料開放されています。
木造3階建ての古い建屋に入ると、何故か映画化された「伊豆の踊子」の歴代ヒロインたちの写真が飾ってあります。
川端康成の小説「伊豆の踊子」で、主人公の青年が伊豆半島を旅している時に踊子たちに出会いますが、
実はその踊り子たちの旅芸人一座は波浮の港を拠点にしていました。
そのため伊豆の踊子の本拠地という意味合いでここに写真が展示されています。
奥の座敷には漁師たちと踊子たちの宴会の様子を再現した人形が置かれています。

【旧港屋旅館とその中で行われた宴会の様子】
█ 筆島
波浮の港から島の東海岸を少し北上すると、筆を立てたような奇岩「筆島」があります。高さ約30mで、
展望台から500mくらい離れているからあまり迫力は感じませんが、むしろ柔らかく暖かみを感じるから“筆島”なのかもしれません。

【筆島】
█ 椿園
都立「大島公園」には植物園と動物園があって、植物園には椿園があります。
展示用に植えられた椿は約1000種3200本と、そしてもともと自生しているヤブツバキ約5000本も含めると国内最大規模のスケールです。
2人ともこれだけの椿を見ることが相当に珍しいようで、感激していました。

【都立大島の椿園】
█ 泉津の切通し
大島一周道路から少し脇に入ると「泉津の切通し」という岩を切り砕いた石段の道があって、両側から巨木の太い根が生えています。
数年前に大島を舞台にした深夜ドラマで、この切通しが映されてSNSで広まって有名になりました。しかしそれまでは島民でも知る人が少なく、
観光名所ではなかったようです。最近は全国各地で地元民も知らない写真スポットが増えているようです。

【泉津の切通し】
█ 三原山登山
島一周ドライブを終えて、今度は三原山登山です。
伊豆大島と言えば三原山、その山体が伊豆大島と言っても過言ではありません。
三原山は二重カルデラ火山で、外輪山の一角が登山口になっています。
登山口の標高は約555m、登山する場合はそこから一度カルデラの底まで20mくらい下り、
標高758mの最高地点があるすり鉢状の火口を目指して登ります。
コースレートは登山口から頂上にある三原神社まで40分、火口一周のお鉢回りが50分、戻ってくるのに30分なので、
休憩を取らなければ約2時間で行って来られます。

【登山口から三原山を臨む】
カルデラの中は比較的平坦で、低い木々と溶岩が固まった岩が多くあります。
地面は火山岩が砕けた軽石のような黒い石や砂でできていますが、
頂上までの道は舗装道路になっています。従って頂上までならば初心者も比較的簡単に登ることができます。
█ 三原山山頂
頂上には「三原神社」があります。この神社は火口付近にありながら1986年の噴火で溶岩流が神社を避けていったので、
その強運を求めて登山してくる参拝客も多くいます。
神社の近くにゴジラ岩と呼ばれるゴジラの姿に似た奇岩があります。ゴジラと伊豆大島、
そして三原山との関係は切っても切れない間柄になっています。

【ゴジラ岩】
█ お鉢回りと火口
火口一周のお鉢回りの道は今までの舗装道路と打って変わって火山岩と砂の道です。
火口は直径約350m、深さ約200mもあり、火口内とその周囲には蒸気が出ている場所もあり、大島の鼓動が聞こえてくるようです。
1984年公開の映画「ゴジラ」で、噴火しているこの火口にゴジラが落ちて終わりますが、ご存じのようにゴジラはその後も何度も復活します。

【三原山火口】
█ 絶景露天風呂
三原山の外輪山の一角にある「大島温泉ホテル」に泊まります。このホテルのお勧めは露天風呂で、
湯に浸かると三原山が目の前に大きく広がって解放感抜群の入浴が味わえます。
私は時々お勧めの絶景露天風呂を聞かれることがありますが、そんな時にはこの露天風呂を紹介することが多々あります。
同行の2人は「この露天風呂は、あまり人に教えたくないね」と言っています。

【大島温泉ホテルの露天風呂から三原山を臨む】
█ 伊豆大島の料理
このホテルは露天風呂以外に、海の幸や野菜を各自で揚げる「椿油のフォンデュ」もお勧めです。
自分で調理している感覚がとても楽しく、新鮮な具材なので味も最高です。
フォンデュ以外に刺身の船盛や金目鯛の煮付けも出てきます。金目鯛は伊豆の下田港が水揚げ日本一なので、
すぐ近くのここ伊豆大島でも多く獲れます。
刺身は“島醤油”につけて食べます。島醤油とは、醤油に青唐辛子を漬け込んだもので、
ピリ辛味がとても刺激的なために刺身に合います。伊豆諸島はかつて静岡県だったので、
静岡と言えばワサビですが、水が貴重な島では水にこだわるワサビは栽培できないので青唐辛子をワサビ代わりに使う食文化が生まれました。

【大島温泉ホテルの夕食 1人前】