パナソニック電送社友会
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No.321
沖縄の離島紀行

2024年6月
植木圭二
 
 沖縄の離島、それも沖縄本島からかなり離れている北大東島と南大東島、 そして与那国島を巡ってきました。島の魅力を堪能して楽しい旅になりましたので紹介します。
 
第一章 北大東島
█ 北大東島に降りる
  沖縄本島から東に360km離れた洋上に北大東島と南大東島があります。那覇から約50分間プロペラ機に乗って北大東島に降ります。小さな島にギリギリ造った空港なので滑走路は1500mしかありません。そのために飛行機は着地と同時に急ブレーキをかけます。
 空港を出るとのどかな田園風景が広がります。島の人口は約550人、島一周道路は13.5kmという小さな島で、サトウキビの生産がこの島の主要産業になっています。大きな製糖工場があり、収穫時期は労働力が不足するので多くの季節労働者を受け入れるそうです。

【北大東島の空港】
 
█ ハマユウ荘
  島には宿は2軒しかありません。私はそのひとつ「ハマユウ荘」に泊まりますが、 その名前から小さな民宿を想像していましたが、完全にその想像を超えていました。 民宿というよりもリゾート施設と言った方が良いかもしれません。
 四角い広い中庭を4つの2階建ての鉄筋コンクリートの建物が取り囲んで建っており、 中庭に面した2階の廊下は回廊のようになって繋がっています。その造りはまるで宮殿で、 コンクリートの打ちっ放しの外壁なのできらびやかではないですが、 むしろそれが堅牢そうに見えて台風が多いこの島ならではの雰囲気がします

【ハマユウ壮の建物と中庭】
 
█ 立派な役場と神社
  立派な役場があります。この役場だけ見ていると秘島(秘境の島)感はありません。 ここは島の中心街ですが、それほど建物は多くありません。

 石造りの鳥居をくぐると、「大東宮」という神社があります。そして私は、旅の安全を祈願して参拝をします。
 小さな社の隣に大きく立派な屋根付きの相撲の土俵があり、立派な観客席もあります。 それは単に相撲を取ると言うよりも相撲は神事なので、島民がそろって神に奉納するのかもしれません。
 

【大東宮と相撲の屋根付き土俵】
 
█ 何もない港
  この島は台風の通り道にあります。絶海の孤島なので波と風が非常に強く高いので、 沖縄本島から物資や人を輸送してくる貨客船を接岸させるのも困難なようです。 そのためにその時の風向きによって船を接岸させる港を選ぶので島には港が3つあります。
  しかしその港は桟橋だけで、係留ロープを掛けるフックがあるだけで港湾設備は何もありません。波や風の被害を考えると何も造らないのが正解のようです。防波堤もないから桟橋には波がもろに当たるため、高い桟橋になっています。桟橋から下を覗き込むと恐怖感さえを覚えます。

  沖縄本島との間を貨客船が週に1~2便就航していますが、港湾設備がないから荷物の積み下ろしには大型クレーン車がやって来て吊り上げ下げします。人間もケージに入れられて荷物と同じように吊り上げ下げされて乗下船をするので、これぞ秘島というシーンが想像できます。
  そんな乗下船をしてみたくて船での上陸を検討しましたが、観光案内所に電話で聞いたら、頻繁に欠航するというので断念しました。

【港の桟橋】
 
█ インスタ映えの遺跡
  西港の桟橋は他の港と同じですが、ここには遺跡があります。遺跡といっても古代遺跡ではなく、この島はかつてリン鉱石の採掘が主要産業だったので、その痕跡が廃墟になって残っています。いかにもインスタ映えしそうな貯蔵庫跡ですが、私たち以外には誰もいません。

【リン鉱石の貯蔵庫跡】】
 
█ 漁港
  貨客船が接岸する港以外に漁船が使う「北大東漁港」は新しく立派です。漁港なので小さな漁船が出入りし、漁船を係留する入り江も必要になります。そのため堅牢で高い防波堤を造り、その防波堤に守られて入り江も港湾設備も漁協の建物もあります。
  防波堤の高さは、ざっと見ても20mくらいで、ここまでしないと強烈な波や風から漁船を守れないのでしょう。この漁港は2008年から10年かけて造ったということです。

【北大東漁港】
 
█ 南大東島へのフライト
  北大東島から南大東島に向かいます。この2島は8kmしか離れていませんので、 飛行機で飛べば5分もかからないはずですが、飛行時間は20分かかります。 それは離陸動作が完了するまである程度上昇する必要があって、 機体を立て直して着陸動作に入るので20分かかります。

  南・北大東島に来る飛行機は那覇から飛び立って約50分間飛行して南大東島もしくは北大東島に着陸し、 機内清掃後に別便として北大東島もしくは南大東島に飛びます。 さらにまた機内清掃をして那覇に戻るというフライトスケジュールになっています。 先にどちらの島に着陸するかは曜日によって変えています。
  ただしこの変則的なフライトは7月で終了して、 その後は那覇~北大東島と那覇~南大東島の2つ別々のフライトになります。

【北大東島と南大東島と那覇を飛ぶ琉球エアーコミューターの飛行機】
第二章 南大東島
█ 南大東島の繁華街
  南大東島は面積でも人口でも北大東島の約2倍で、約1300人の島民が暮らしています。
  私が泊まったホテルは鉄筋コンクリート4階建てで、台風に強そうで頑丈そうですが何の変哲もありません。 宿の周辺には村役場や駐在所、小中学校、商店が並んでいます。北大東島の役場にも驚きましたが、さらに立派です。 この辺りが中心街になるのでしょうが、繁華街と呼ぶには無理があるようです。
  中心街を少し歩くとすぐに郊外になり、溜池が多くあります。道端にはカエルの死骸がたくさんあるので、 溜池から道に出て交通事故死したようです。この光景から島なのに農業用水が豊富なことが分かります。

【南大東島村役場】
█ 島の海岸
  海岸線は北大東島とよく似ています。何もない桟橋だけの港が3つあります。わずか8kmしか離れていない兄弟のような島だから似ていて当たり前かもしれません。
  もちろん漁港もあって、北大東島と同じで頑強な堤防に囲まれています。

  西港にはキャンプ場があり、キャンプをしている人がいます。それも1人キャンプで、のんびりと島の時間を楽しんでいるかのようです。
  キャンプ場の隣に「開拓百周年記念碑」があります。1900年に八丈島から南・北大東島に開拓民が上陸して開拓が始まりました。この碑はその100年後の2000年に建てられました。

【キャンプ場と開拓百周年記念碑】
 
█ 海岸プール
  北大東島になくて南大東島にあるのが「海岸ブール」です。これは自然の地形を利用した天然のプールで、砂浜がないので島の子供たちはこのプールで泳ぐようです。
  いかにも“ワイルドだぜ”という言葉がぴったりです。

【海岸プール】
 
█ サトウキビ畑の島
  島の中央付近のやや高くなった場所に櫓で組んだ「日の丸山展望台」があります。 展望台からはサトウキビ畑と溜池が見えますが、荒地はほとんどありません。

 【日の丸山展望台見た南大東島の畑】
 
█ シュガートレイン
  廃線になった線路の一部があります。この島は今でもサトウキビが主要産業ですが、トラック運搬が普及する前の時代にはサトウキビ運搬用のトロッコ列車が走っていました。その列車の名前が「シュガートレイン」で、実際に運行していた車両がホテルの近くの運動場前に展示してあり、かなり錆び付いていて保存状態は良くないですが、 この島の過酷な自然環境を伝えるにはもってこいでしょう。

【展示されているシュガートレイン】
 
█ 鍾乳洞
  「星野洞」という鍾乳洞があります。星野さんの土地で見つかったのでそのような名前がついているそうで、 中に入るととても個人の所有物には到底思えない立派な鍾乳洞が広がっています。 パンフレットには東洋一美しい鍾乳洞と書かれており、私も国内外各地の鍾乳洞を見てきましたたが、 美しさは東洋一かも知れません。
  100年ちょっと前に人が移り住んできた太平洋の大海原の小さな島で、 さらに個人の所有地だから手付かずの自然がそのまま残っています。

【星野洞の内部】
 
█ 気象台
  気象情報で「南大東島・・・」と、よく耳にするフレーズの気象台が南大東島にはあります。 そして毎朝8時30分に気象観測気球を飛ばすイベントがあり、それが島の観光パンフレットに載っています。
 時間になるとコンテナの屋根が開いて気球が放たれてゆっくりと上昇していきます。 気球は白くて小さいので、曇り空の中にすぐに吸い込まれていきます。
 それにしてもこれを毎日上げているということは、消耗品なのでコストや環境問題も考慮しないといけないでしょう。 気象庁は地味ながら大変な仕事をしていると感心します。

【気象観測気球を飛ばした瞬間】
 
第三章 与那国島
 
█ 遠く古い与那国島
  与那国島は日本の領土の中で最も東京から遠い島で、東京から2000kmも離れています。
  与那国空港に降り立ち、レンタカーを借りて、標高85mの岩山「ティンダバナ」に登りました。そこから祖納集落が一望できます。

【ティンダバナから祖納集落を見る】
 サンゴの隆起と浸食で出来た山で頂上付近に岩が突き出て屋根のようになっている所があり、珍しいことに岩の隙間から水が湧き出ている不思議な山です。
  湧き水があり雨風が凌げるので人間が暮らしていた形跡もあり、15世紀末に実在したらしい女酋長サンアイ・イソバの住居があったとされています。
  この岩だけで、与那国島の歴史を感じます。歴史が全て分かっている南・北大東島では伝説は全く存在しませんでした

【ティンダバナ 人が暮らしていた跡】
 
█ Dr.コトー診療所
  テレビドラマ「Dr.コトー診療所」のオープンセットが入場料300円で公開されています。診療所なので待合室、受付、診察室があります。
  ドラマは2003年から始まったので、このセットはそれに合わせて作られました。当時の建設費は約2000万円だったとパンフレットに書かれています。
  鉄筋コンクリート製の建物で完成当時は真新しかったようですが、テレビ局の美術スタッフが古く見せる工夫をしました。単に古くしただけでなく細部にこだわっていて、例えばドラマでは与那国島ではなく志木那島という島名なので、ポスターや掲示物、表彰状に至るまで志木那島になっています。  
  診療所には屋上があり、外階段から屋上に登れます。目の前には海が広がり、そこから見る与那国の海はドラマの世界そのものになっています。

【Dr.コトー診療所のオープンセット】
 

【Dr.コトー診療所のオープンセットの内部】
 
█ 日本最西端
  与那国島と言えば、日本の最西端なので「日本最西端の碑」があります。
  当たり前のことだが、日本には4つの最〇端があります。しかし一般人が行くことができるのは最西端の与那国島だけです。最北端は北方領土の択捉島、最東端は南鳥島、最南端は沖ノ鳥島で普通の人は行けません。

【日本最西端の碑】

  ここから台湾までは111kmなので、晴れていれば台湾が大きく見えるはずですが、残念ながら本日は曇りで見ることができません。ただし展望台の壁に台湾を臨む景色が描かれています。
  昨日までいた平べったい南・北大東島とは全く様子が異なります。

【日本最西端の碑の近くにある展望台 台湾が見える景色が描かれている】
 
█ 久部良バリ
  日本最西端の近くに「久部良バリ」があり、説明看板にはこう書かれています。
  「琉球王府は15歳以上の全ての男女に人頭税をかけたので、その影響は与那国島にも及び、島では人減らしのために妊婦を集めてこのバリ(岩の割れ目)を飛ばせ、妊婦たちは必死に飛んだが、転落や流産に至った」とあります。
  割れ目の幅は2mくらいでかなり深く、落ちれば流産どころか本人も生きていないかもしれません。
  このとんでもない悪法、風習を廃止させたのが、あの岩山ティンダバナに住んでいた女酋長サンアイ・イソバだと言われています。それは15世紀末のことです。

【久部良バリ】
 
█ ヨナグニサン
  世界最大の蛾「ヨナグニサン」を飼育している「アヤミハビル館」に立ち寄りました。
  私は最初、標本と思って通過してしまいましたが、ヨナグニサンは生きていても動かないからケースに入れる必要もなく“触らないで”、“息を吹きかけないで”と注意書きが貼ってあるだけです。
  羽根を広げた大きさが私の手の平くらいなので約20cm、思っていたより小さく感じます。世界最大という言葉に期待し過ぎたようです。
  ヨナグニサンはモスラのモデルになったというので、何となくモスラに似ています。いや、モスラが似ているのです。

【世界最大の蛾ヨナグニサン】
 
█ 島の東側
  日本最西端の島なので西側に興味がいきますが、景勝地は東に多いようです。
  「立神岩」は与那国島のポスターに頻繁に登場する岩で、確かに“神が立っている岩”のように見えます。

【立神岩】
 
█ 最西端の島の最東端
  与那国島最東端の「東崎(あがりざき)灯台」では日本在来馬のひとつで天然記念物の与那国馬が草を食べています。 どうぞ写真を撮って下さいとポーズをとっているので、まるでモデルのようです。

【東崎灯台と与那国馬】
 
█ グルメ
  観光地の色合いが濃い与那国島はもちろんのこと、南・北大東島でも海の幸をたくさん食べることができます。いや海の幸しかないといった方が正しいでしょう。
 南・北大東島の大東寿司は醤油に漬け込んだ刺身をネタにして握った寿司です。このルーツは伊豆諸島で、八丈島から開拓民が渡ったのでその歴史の証です。

 どの島も海の幸はカツオ、イカ、キハダマグロの刺身が主流です。そして与那国島の近海ではカジキマグロがよく獲れるというので、カジキマグロのステーキも美味です。

 沖縄のそばは、そば粉を使っておらず小麦粉なので分類上はラーメンです。その麺に豚の三枚肉(豚ばら肉)をのせたものが沖縄そばと呼ばれています。ちなみに三枚肉の代わりにソーキと呼ばれる豚の骨付肉をのせたものがソーキそばです。
 今回の旅では沖縄そばも満喫してきました。沖縄そばも島によって少しずつアレンジされており、南大東島の大東そば、与那国島の与那国そばも美味でした。

【離島のグルメ】
 
 
  以上、沖縄の離島の旅を簡単に紹介してきましたが、この紀行文では紹介しきれない場所やエピソードなどを記載した旅行記を別途公開しています。 「旅のチカラ研究所」のホームページの旅行記「沖縄の旅2024」を是非ご覧ください。
  http://tabinotikara.com/index.html

植木圭二
 
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