立山黒部紀行
2023年5月
植木圭二
立山黒部アルペンルートは、たとえ行ったことがなくてもその名前だけは知っている人が多いと思います。
難工事の末に完成した黒部ダム、道路の両側に雪の壁がそり立つ雪の大谷などを巡ってきましたので紹介します。
█ 立山黒部アルペンルート
立山黒部アルペンルートを簡単に言うと、長野県の大町市から富山県の立山市の間に横たわる立山連峰に穴を開けて作った道です。ただし人間が歩く道ではなく、
移動手段としてケーブルカー、ロープウェイ、電気バスなど様々な乗り物を利用するというものです。そのルート上には有名な黒部ダムや、雪の大谷などがあります。
【立山黒部アルペンルート概要】
長野県側からでも富山県側からでもどちらからでも行けますが、今回私は長野県側から入りました。
まずは扇沢駅から電気バスに乗ってトンネルを抜けて黒部ダム駅まで行きます。朝早いですが多くの人々が何台もの電気バスに乗り込んで発車します。
【扇沢駅で乗客を乗せる電気バス】
全長6.1kmのこのトンネルは黒部ダムを造るために資材や重機を運ぶ目的で掘ったものですが、工事は困難を極めて多数の死者が出ることになりました。
その時の様子が小説「黒部の太陽」で紹介され、後に三船プロと石原プロによって映画化されました。
█ 黒部ダム
黒部ダムはともかく大きなダムで、堤防の高さは実に168mもあります。もちろん日本一の高さです。
ダムの堤防の上の道路を端から端まで歩きましたが10分以上かかりました。
【黒部ダムと黒部湖】
黒部ダムは大きさだけでなく、独特の美しいアーチ形状をしています。そのアーチ形状は堤防にかかる水圧を計算して湾曲させて両側山腹の岩盤に分散させる構造になっています。
従ってこの水圧に耐えられる強固な岩盤も必要になります。もはや単なるダムと言うよりも芸術作品の領域です。
【黒部ダムのアーチ状の堤防】
ダム湖の水は専用トンネルを通って約10km下流の地下に建設された黒部川第四発電所に送られて発電に使われます。
その発電所の名称から黒四(くろよん)ダムとも呼ばれることもあります。1956年に着工、難工事の末に1963年に完成し、その5年後に映画が公開されました。
█ 雪の大谷
黒部ダムから全てトンネルの中を走るケーブルカー、そしてロープウェイに乗り換えて、
立山連峰の“土手っ腹”に穴を開けた日本で一番高い所にあるトンネルをトロリーバスで走り抜けると標高2450mの室堂駅に出ます。
その室堂駅の近くに雪の壁に囲まれた道路で有名な「雪の大谷」があります。
室堂駅の駐車場付近の道路脇の雪の壁の高さは最初2~3mですが、その道路を歩いて行くとしだいに高くなっていきます。
しかし実際には雪の上の面の高さはあまり変わっておらず、道路が少し坂道で下っているので雪が積み上がっていくように感じられます。
つまり私たちは大きな谷の底に向かって歩いているので、雪が深くなったことになります。
このことから「雪の大谷」とは地名ではなく、ただ単に大きな谷のことを言っていることだとわかりました。
【室堂駅の駐車場 右側が雪の大谷】
その大きな谷に積雪と風によって雪の吹き溜まりが出来て、雪の自重で押し固められます。
そのため雪の深さは毎年変わり、今年は13mになっています。つまり雪の壁の高さは道路から13mもあります。
私が訪れた時の気温は氷点下5℃、この気温にも助けられて雪の壁は非常に固くなっています。とても人の力では削り取ることができません。
【高さ13mの雪の大谷】
█ トロッコ電車
雄大な立山黒部アルペンルート以外に、この地域には日本一深くて広い黒部峡谷があります。
日本一の渓谷なので豊富な水資源があり、それを利用した発電所を建設するために資材運搬用の鉄道が敷設されました。
現在この鉄道は発電所やダムのメンテナンスにも使われていますが、主役は観光用のトロッコ電車です。
ただしこのトロッコ電車に乗っても黒部ダムには行けません。立山黒部アルペンルートとこのトロッコ電車は観光ルートとしては別モノになっています。
【トロッコ電車】
多くの観光客を乗せてトロッコ電車は黒部渓谷の奥に進んで行きます。
トロッコ電車なので窓がなく、そのため体全体で春の風を直接感じて実に爽やかな気持ちになります。
渓谷を流れる黒部川の水は明るい緑色をしており、周囲の深い新緑の木々とのコントラストも抜群です。
渓谷なので両岸に山があり、高い山なので上の方には雪が残っています。さすが日本一の渓谷という言葉に納得します。
【トロッコ電車からの景色】
目の前にヨーロッパの古城のような建物が現れましたが、車内アナウンスでは発電所という説明をしています。
その古城風の発電所と緑色の川の水と線路や架線とのコラボレーションは何とも言えない雰囲気を出しています。それはまるでヨーロッパです。
【古城のような発電所】
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