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No.296 
しまなみ海道 歩き旅

2023年1月
植木 圭二

 昨年の11月、私は本州と四国を繋ぐ約70kmの「しまなみ海道」を歩いて渡ってきました。
しまなみ海道は瀬戸内海に浮かぶ6つ島を9本の橋で結んでいるので、途中の島でも充実した宿泊施設があります。そんな島から島への2日半の歩き旅を紹介します。
 

■しまなみ海道とは

 
 本州から四国に渡るルートは3つあります。真ん中に位置する瀬戸大橋は鉄道・自動車兼用、東にある淡路島を経由する神戸淡路鳴門道は自動車専用、そして西にある広島県の尾道と愛媛県の今治を結ぶ「しまなみ海道」は自動車以外に人や自転車も通行できます。
 そのしまなみ海道を自動車で渡る場合は広島県の西瀬戸尾道IC(インターチェンジ)から愛媛県の今治ICまでの約60kmの高速道路になり、島の中にもICがあるので各島で降りることができ、簡単に島内ドライブも楽しめます。
 しかし自転車や歩いて渡る場合は少し事情が異なります。海を渡る橋の部分は高速道路の橋に側道を設けて人間や自転車も渡れるようになっていますが、陸地部分は高速道路なので歩道はなく一般道を歩くことになります。そのため高速道路が全長約60kmなのに対して、歩くルートは少し長くなります。下の略図では赤が自動車用の高速道路、黄色がサイクリングロードです。そして歩行者もサイクリングロードを歩きます。
 

【しまなみ海道の略図 赤が高速道路で黄色がサイクリングロード 左が尾道で右が今治】
 
 さらに細かい話をしますと、橋は物流や観光以外に島に住む人々の生活道路にもなっています。そのため高速道路を走行することができない軽車両や原付、125CC以下のバイクも通行できるようになっています。
 

【橋の入口の看板 人と自転車以外に原付など125CC以下のバイク道路に分かれる】
 

■今治をスタート

 
 しまなみ海道を2日半で歩くという私の旅の計画を聞いて、一緒に行きたいという物好きな友人がいました。私にとっても1人よりも2人の方が楽しいのと、何かの時に助け合えるので願ったり叶ったりです。ちなみに彼は私よりも3つ年上の69才、趣味はゴルフなので歩くのは問題なさそうですが、歩き旅それも長距離歩き旅は経験はないと言っていました。
  そんな友人と私の「しまなみ海道歩き旅」は、本州側ではなく四国側からスタートします。その理由は前日まで彼と私は四国を旅してきたので、今治市内のホテルに前泊して朝早く今治駅の隣の波止浜(はしはま)駅まで列車で行き、そこから歩きはじめます。
 

【波止浜駅前にて友人(左)と私(右)】
 
 最初に渡るのは来島海峡大橋です。この橋は日本最初の三連吊橋で、第一大橋、第二大橋、第三大橋に分かれており、この3つを合わせると4.1kmにもなります。長さだけでなく海面から橋までの高さは65mもあり、それは瀬戸内海を航行する大きな船がこの橋の下をくぐるために必要は高さだからです。そのために海面を遥か下に見ながら約1時間も橋の上を歩くことになります。
 

【来島海峡大橋の断面図】
 
 問題はその高さまで登る方法で、歩行者だけなら階段にすることもできますが、サイクリングロードなので自転車が走るためには緩やかなスロープが必要になります。従って私たち歩行者もそのスロープを歩かなければならず、これが結構大回りになります。
 

【来島海峡大橋の第三大橋 左側の側道が歩道兼自転車道】
 
 私たちはまず第三大橋を渡ります。しまなみ海道に架かる橋の名前は基本的には本州側が基準になっています。従って四国側からは第三、第二、第一という順番に渡ります。
  本日は雲ひとつない晴天で、景色は抜群です。青い海に大小様々な島並が映える光景は、まさしく “しまなみ海道” たる由縁でしょう。下を見ると青い海が広がっており、橋の下を航行する船が小さく見え、さすがにこの高さには足がすくんでしまいます。
 

【来島海峡大橋からの眺め】
 
 第三大橋を渡たり終えると、そこは馬島という小さな島の上空になります。“上空”と書いた理由は海面から65m以上あり、馬島の地面からもかなり上にあるからです。
  そしてそんな高所にトイレの標識があります。「こんな高いところでトイレとはどういうことなのか」と私は友人と顔を見合わせ、まさか65mの橋の上から“立ちション”ではなかろうと言いながら、標識に沿って歩いて行くとエレベーターがあり、人間以外に自転車もオートバイも載せられるようになっています。そのエレベーターに乗り、65m近くある高低差を一気に降りると出口は馬島の地面でトイレがあります。
  馬島は人口10人の有人島で自動車道路のICはありますが、人や自転車、125CC以下のバイクはICを通過できないので、このエレベーターで島の一般道に出ることになります。

  再度エレベーターで上に昇って歩き始め、大島へ向かいます。サイクリングロードは人も自転車も上り下りの区別がなく、一本の道を行き来するので多くのサイクリストたちとすれ違います。私たちは前方から来るサイクリストたちに「こんにちは」、「がんばれよ」と声をかけます。彼らも元気にそれに応えてくれます。
  サイクリストは外国人が多く、ここが世界的に有名なサイクリングロードなのだと改めて感じます。そして日本人の女性1人旅というのも意外に多く、この道が極めて安全でインスタ映えするスポットが多いからでしょう。
 

【橋の側道の徒歩兼自転車道路】
 
 伯方島から大三島に渡ります。この地域、いや瀬戸内海の島々に共通していると思いますが、特徴的な風景が2つあることに気が付きます。
  ひとつはソーラーパネルが非常に多いことで、至るところで目に留まります。瀬戸内海気候は雨が少ないから日照時間が多いことに起因しているようです。そしてもうひとつは老人ホームが実にたくさんあるように感じます。これも気候が温暖で海産物が新鮮で旨いことから年配者が暮らしやすいという理由かもしれません。
  そんなことを友人と話ながら歩いていると、その情景にピッタリの場所が私たちの目の前に現れます。たくさんのソーラーパネルの向こうに大きな老人ホームが建っています。
 

【ソーラーパネルとその向うにある老人ホーム】
 
 大三島橋を渡り大三島に入るとサイクリングロードは海の近くの一般道になり、右に海、左に民家や畑、その向うに山という景色が続きます。
  海辺のあちこちには小さな桟橋があります。島の人々の生活にとって海は魚貝類を獲るだけでなく、物や人を運ぶ道でもあることが感じられます。
 

【住民のための小さな桟橋 海遊びもできる】
 
 大三島の多々羅大橋の手前の多々羅公園があります。
  ここには「サイクリストの聖地」という記念碑があり、その前では多くのサイクリストたちが写真を撮っています。その写真撮影が終わるのを待って、何とか1枚の写真を撮ることができました。
 

【サイクリストの聖地の碑記念碑 背後は多々羅大橋と生口島】
 
 サイクリストの聖地の碑から近い場所に多々羅しまなみドームという日帰り温泉施設があります。しまなみ海道の6つの島では唯一の温泉施設になります。ここで初日の疲れをとって本日の宿に向かいます。
 

【温泉がある多々羅しまなみドーム】
 
 多々羅しまなみドームから歩いて15分くらいのところに本日の宿を予約してあります。宿に着いた時点で、歩数計の数字は51466歩、35km近く歩いたことになります。
  歩き旅の初日の宿は大三島の「民宿なぎさ」で、海辺の民宿ならではの豪華な料理には驚くばかりです。これだけの料理が出て2食付き宿泊費が7700円とは感動的です。
 

【民宿なぎさの夕食 この他に天ぷらなど出ました】
 

■しまなみ海道、2日目

 
 私たちが泊まった民宿は大三島なので愛媛県でしたが、30分も歩けば多々羅大橋を渡り広島県に入ります。愛媛県と広島県は、瀬戸内海を挟んで対岸にあるので見える形の県境はありませんでしたが、しまなみ海道が開通したために多々羅大橋の真ん中に県境の標識ができ、そこを跨いで広島県に入ります。
 

【多々羅大橋の県境の標識】
 
 多々羅大橋を渡り、生口島に入ります。かなり距離を歩いたはずですが、次の因島に渡る橋はなかなか見えてきません。
  最初は単に遠いなと思って歩いていましたが、地図を見直してその理由が分かりました。それは多々羅大橋から生口島に入った時に見た観光用地図は南北が扁平していたので島の南側ルートも北側もルートもあまり距離の差がなく、南側よりも北側の方が面白そうなので北側を歩いたためです。確かに北側には綺麗な瀬戸田サンセットビーチがあり、夏ならば多くの海水浴客で賑わうよう場所です。
 

【瀬戸田サンセットビーチ 遠方には多々羅大橋が見える】
 
 瀬戸田サンセットビーチから瀬戸田の街を抜けて、生口橋に行く途中の道は、左に海と人家、右にミカン畑があり、真っすぐな道が続きます。
 ここは一般道なのでサイクリスト以外に時々地元の人々ともすれ違います。しかしながら私たちのように歩き旅の人とは出会うことはありませんでした。
 

【生口島の東海岸の真っ直ぐな道】
 
 生口島から因島に渡り、本日の宿「ペンション白滝山荘」に到着します。
  宿に着いたところで歩数計は38572歩を示しており、25kmほど歩いたことになります。当初予定では21kmだったので、だいぶ遠回りしたようです。

【ペンション白滝山荘の外観】
 
 このペンションの建物は1931年に、有名なアメリカ人建築家ヴォーリズの設計でアメリカ人宣教師の家として造られました。つまり築92年の洋館で、お洒落な外観と落ち着きある重厚な感じの館内になっています。
  この洋館ができた頃は信者を中心に近隣の人々の集いの場だったようですが、戦争のため宣教師一家が去り、時を経るにつれ洋館は荒れていったそうです。
  そして1987年にペンション白滝山荘として再生し、現在のペンションのオーナーが引き継ぎ、家族で経営しています。
  食事は上質で美味しいことは言うに及ばず、ペンションとしての“おもてなし”は、随所でホスピタリティ精神を感じ、感銘を受けるものばかりです。
 

【ペンション白滝山荘の内部@】
 

【ペンション白滝山荘の内部A】
 
 食堂には暖炉があり、その近くに一枚の古い写真が飾ってあります。1948年当時のものというから第二次世界大戦後間もない頃の写真です。周りには何もなく、海が近くに迫っていることから、だいぶ戦後に埋め立てられたようです。そして何よりも感じることは、実に重厚なたたずまいをしているということです。
 

【ペンション白滝山荘の築17年の頃の写真】
 

■最後の半日

 
 宿を後にして最後の向島に渡るために因島大橋を目指します。因島大橋は歩いて渡る人のために珍しく階段があります。恐らくサイクリングロードとして全体計画が決まる前に施工されたためかもしれません。
 

【因島大橋の因島側の上り口】
 
 階段を登り橋の上に出ると、サイクリングロードと合流し、125CC以下のバイクや軽車両の走る道に合流したところに料金所が設けられています。料金所と言っても料金箱に自己申告で料金を投入するだけになっています。ちなみに歩行者と自転車は無料ですが、軽車両やバイクは50円と書かれています。
 

【因島大橋の歩行者、自転車、バイクの入口と料金所】
 
 向島に渡り、あとは尾道を目指すだけになります。
  この島に限ったことではありませんが、ミカン畑が至る所にあって収穫したミカンを運搬するためのトロッコのレールも見受けられます。
 

【ミカン畑とトロッコのレール】
 
 そんな地域なのでミカンの直売所があります。詰め放題で300円の看板が出ていますが、とても食べきれないので、交渉して100円分を分けてもらうことにしました。直売所のベンチで食べるミカンの味は格別です。
 

【ミカンの直場所にて】
 
 向島の北側から対岸の尾道は直ぐ近くで、目の前に尾道の街並みが見てとれます。私たちは尾道大橋ではなく向島の富浜から尾道駅前に着く渡船に乗り、ゴールとしました。
  乗船時間は5分くらいなので住民が通勤通学に多く利用しているようです。
 

【尾道駅前の渡船発着所】
 
 尾道駅に着いたのはまだ昼前で、本日は半日かけてここまで16427歩、約11kmを歩いたことになります。
  そして今回のしまなみ海道歩き旅としては、2.5日間をかけて今治の波止浜駅から尾道駅まで106465歩で歩き、それは距離にして約70kmになりました。
  最後に今まで歩いて来たしまなみ海道の高低差や区間距離、渡った橋が書かれていた看板があったので、それを掲載します
 

【しまなみ海道サイクリングロードの高低差・区間距離 左が尾道、右が今治】
 
 この旅については、前後に行った四国や山陰の旅と合わせて「旅のチカラ研究所」のホームページに旅行記「四国中国紀伊の旅2022」として公開しております。しまなみ海道以外にDMV(鉄道・道路兼用車)や超豪華夜行バス、日本で一番長い路線バスなどに乗り、各所のグルメも紹介していますので是非ご覧ください
http://tabinotikara.com/index.html
 


植木圭二
 
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