パナソニック電送社友会

会 員 便 り


No.280



お薦めの宿七選

2020年11月
植木 圭二

 最近私が行ったお薦めの宿を紹介します。それらは高級な宿ですが、 費用的には比較的泊まりやすく特徴ある宿を7つ選びました。皆さまの旅の参考にしていただければ幸いです。
 
■ギネス認定の宿 西山温泉「慶雲館」(山梨県)
■日本で一番人気がある国民宿舎 国民宿舎「鵜の岬」(茨城県)
■サミットの開かれた宿 「ザ・ウインザーホテル洞爺リゾート&スパ」」(北海道)
■船でしか行けない宿 「大牧温泉旅館」(富山県)
■あの有名なポスターの温泉 法師温泉「長寿館」(群馬県)
■志摩半島にある驚きの宿 大江戸温泉物語 TAOYA 志摩 (三重県)
■日本を代表するリゾートホテル 「星野リゾート トマム」(北海道)    
 

■ギネス認定の宿


 山梨県の南西部にある早川町は日本一人口が少ない町で、南アルプスの麓にあってのんびりとした雰囲気の町です。 そんな町なので町内には信号機は1つしかありません。
 そこにある西山温泉「慶雲館」は、創業705年という世界最古の温泉宿としてギネス世界記録に認定されています。 705年と言えば奈良時代の前、飛鳥時代のことです。長閑で何もない渓流沿いにたたずむ宿は落ち着きがあって、ロビーからの眺めも素晴らしいものです。
 

【渓流を臨むロビー】
 
 温泉は露天を含め男女別の大きな風呂が4つあり、木を巧みに使った湯船が特徴で渓流を眼下に眺めて 目の前には緑豊かな深い山を見ながらの入浴になります。その他に貸し切り露天風呂が2つありますが、小さな風呂だという私の予想を覆して10人は入ることができそうな大きな岩風呂に驚きます。普通の旅館ならばこの風呂を大浴場にしているのかもしれません。
 湯量が豊富なので源泉かけ流しはもちろんのこと、カランやシャワーから出る湯も温泉を使い、各部屋にある風呂も温泉です。 その各部屋の浴槽も木で造られているから驚きは絶えません。
 

【露天風呂「望渓の湯」】
 

【渓流を臨む古代檜を使った「檜香の湯」】
 
 温泉旅館では温泉と並んで楽しみなのは食事です。山奥にあるこの宿ならではのこだわりがあって、 海の幸は出てきません。味はもちろん、器や皿にもこだわりがあります。
 宿を出発する時に対応してくれた仲居さんはまだ若く、 あどけなさが残る顔をしていましたがしっかりとした仕事をしてくれました。 私が旅館を評価するポイントの一つとして若い人が自分の仕事に責任をもって一生懸命働いているかを見ますが、 部屋担当の青年も夕食の世話をしてくれた青年も、自信と誇りを持って仕事をしているように感じました。
 
 ギネス世界記録に認定されているこの宿は、その誉に負けないように設備や料理はもちろんのこと 働く人も素晴らしいことに感激しました。
 

【慶運館の玄関 仲居さんと妻】
 

■日本で一番人気がある国民宿舎


 茨城県日立市の国民宿舎「鵜の岬」は日本で一番人気がある国民宿舎です。 91ある公営国民宿舎で客室稼働率が20年以上ずっとトップを維持しています。 そのためこの宿はなかなか予約が取れません。   国民宿舎というと四角い殺風景な建物を想像しますが、8階建てのこの宿は曲線を基調に斬新なデザインをしており、 ちょっと例えようがない形をしています。広い敷地には宿泊棟以外に丸いレストランや多目的ホールといった お洒落な外観をした建物もあります。
 

【国民宿舎「鵜の岬」の外観 左が宿泊棟、右がレストラン棟】
 
 建物に入るとロビーはとても明るく解放感抜群で、私の持っている国民宿舎のイメージとは程遠いものです。受付の若いスタッフの対応は「おもてなし」の教育が徹底しているということが感じられます。
 

【広く明るいロビー】
 
 廊下には手すりが完備されており、高齢者に優しい設計になっています。木を多く使っているのが特徴的で、 昔の豪華客船の船内を彷彿させてくれます。
 部屋はもちろん綺麗で、特に驚くのはバルコニーの床が木製の茶色の高級なスノコになっており綺麗に清掃されているので、 躊躇なく素足のままバルコニーに出られます。鵜の岬という名前から分かるように岬の突端にある宿なので オーシャンビューが売りになっており、お客がバルコニーに出るというのは当たり前で、その配慮はさすがです。
 最上階にある展望風呂からの眺望はさらに素晴らしいものになっています。この風呂から見る朝日もまた見事なものです。
 

【太平洋から上る朝日】
 
 食事は別棟の丸いレストランで食べます。360度に近い眺望で、天井が高く豪華で解放感があり、
このようなレストランはあまり経験したことがありません。
 そして食事が終える頃、驚くべき光景を目にすることになります。お客が席を立ってレストランから出ようとすると、 配膳や片づけ作業をしている従業員たちが、作業を止めてそのお客の方を向いて 全員そろってお辞儀をして「ありがとうございました」と声をそろえて言っています。 私にとっては初めて見るその光景がとても斬新で印象的で、さすが日本一の国民宿舎だと改めて感心してしまいました。
 

【レストランの内部全景】
 

■サミットの開かれた宿


 北海道の洞爺湖を見下ろす高台にある「ザ・ウインザーホテル洞爺リゾート&スパ」は、 2008年に主要先進国首脳会議(サミット)が開かれたということで有名な宿です。 宿に入ると3階まで吹き抜けにした綺麗で広いエントランスで生花が歓迎してくれます。
 

【生花の前で記念撮影 妻と私】
 
 洞爺湖に面したロビーは縦長の何枚もの大きなガラス越しに洞爺湖を眺めることができ、 この景色がこの宿の最大の売りになっています。
 その反対側にも同じようなガラス張りのロビーがあり、こちらは緑の森を見ることができます。
普通の宿ならばこの反対側だけでも充分にお客は満足するのでしょうが、こちら側には誰もお客がいません。
 

【ロビーから洞爺湖を臨む】
 

【ロビーから洞爺湖の反対側の森を臨む】
 
 夕食にお洒落なレストランに案内され、もちろん洞爺湖を見ながらの食事になります。 料理は完全なフレンチのコースで、地元北海道の選りすぐりの高級食材を使って上品に仕上げられています。 もちろんどれも美味しいのですが、次から次に出てくる料理は珍しいものや高級食材が使われており、 それらの出てくる順番が工夫されており徐々に驚きが増していくようになっているようです。
 さすがサミットが開かれたホテルは違います。
 

【レストランの席から見た洞爺湖】
 
 食事が終わり部屋に戻ると、窓の外に驚くような光景を見ることになります。 それは満月の明かりが洞爺湖の湖面に反射して幻想的な洞爺湖を映し出しており、 さらに湖面と月の間にある雲の影がうっすらと湖面に映り込んでいます。 こんな幻想的な光景は私もあまり見たことがありません。部屋を真っ暗にして一時間ほどこの光景にしたっていましたが、 これを見ることができただけでこの宿に泊まった価値があったように思えてきたから不思議なものです。
 眼下の湖畔には洞爺湖温泉街の灯りもあり、それらを上から眺めることになるので、 この優越感がこの宿の最大の売りかもしれません。
 

【洞爺湖の夜 満月と湖畔の温泉街の灯り】
 

■船でしか行けない宿


 富山県の庄川の畔にある「大牧温泉旅館」は“船でしか行けない秘湯”という キャッチコピーで有名な宿で、よくテレビで紹介されています。
 川の水は青というよりも緑色をしており、この水の色の理由はプランクトンだということです。 ダム湖なので元々は庄川が流れるV字谷の渓谷で、左右の山からも小さな滝が落ちています。 そんな光景を見ながら30分の船旅をして大牧温泉に到着します。
 

【大牧温泉旅館の全景】
 
 館内に入るとロビーには囲炉裏が切ってあり、囲炉裏の向こうの窓の外は庄川の緑色の川面が見えます。 古い建物ですが、安普請ではなくしっかりと重厚な造りをしています。
 館内にはたくさんの有名人の色紙や写真が額に入って大切に飾ってあります。 この宿はその立地条件から温泉紹介の旅番組や2時間のサスペンスドラマの撮影に数多く使われており、 特異な人気宿です。私もそれらの番組を見ていたので、船が宿に着くというシーンが浮かんできます。
 

【有名人の色紙と写真 これらはほんの一部景】
 
 食事処からも川面を眺められるので、まるでクルーズ船に乗っているようです。
風呂は男女別々に庄川に面したテラス風呂、宿の裏山の中腹にある露天風呂、そして内湯の岩風呂があります。 どの風呂もやや温めの温度設定で景色を見ながら長湯ができます。
 

【庄川を見ながら食べる食事処】
 

【庄川を見ながら入浴するテラス風呂】
 

■あの有名なポスターの温泉


 覚えている方も多いと思いますが、あの有名なポスターの温泉の宿に泊まってきました。 それは1982年に国鉄のフルムーン旅行の宣伝用ポスターで、 高峰三枝子と上原謙の入浴シーンで有名になった法師温泉「長寿館」です。
 

【国鉄のポスターに使われた風呂】
 
 法師温泉は群馬県みなかみ町にあり、赤谷湖から少し奥に入ったところにある秘湯の一軒宿です。
そして私たちが泊まった部屋は、文豪のおしどり夫婦で有名な与謝野晶子と与謝野鉄幹が泊まったという 由緒正しい部屋です。
 この宿は昔から夫婦やカップルに人気があったようです。 だから国鉄のフルムーンの宣伝に使われたようです。
 

【与謝野晶子と与謝野鉄幹が泊まった部屋】
 
 温泉はもちろんのこと、宿は円熟した素晴らしい宿です。私たちが泊まった11月上旬は、間もなく終わろうとしている見事な紅葉が情緒豊かな宿のたたずまいと相まって素晴らしい光景になっていました。
 

【宿の外観 宿泊棟と温泉棟の一部】
 

【宿の外観 道路を挟んで渡り廊下で繋がっている】
 

■志摩半島にある驚きの宿


 志摩半島に大江戸温泉物語ホテルの宿で「TAOYA志摩」があります。 このホテルグループはかつて高級で泊まることができなかった宿を比較的安価で泊まることができるようにして 最近人気が高まっています。
 そこの社員が個人的に勧めてくれたのがこの宿で、その社員は「今まではあんな高級ホテルは高くて泊まれませんでしたが、 大江戸温泉物語になったので泊まれるようになりました」と強く言っていたのでなるべく早い時期に行こうと決めていました。
 ホテルに入ると広いロビーがあり、大きなガラス越しに海が広がっています。 海岸はきれいな砂浜でホテルのプライベートビーチのようですが、 実は鳥羽白浜海水浴場です。ただ実際にはホテル専用のようになっており、 このロケーションは感激ものです。
 ホテルと砂浜の間の芝生には、草間彌生の「南瓜」という大きな作品がひと際異彩を放って置かれています。
 

【TAOYA志摩のロビー】
 

【ロビーから海を臨む 右奥に草間彌生の「南瓜」】
 
 全ての部屋はオーシャンビューで、私たちが泊まった部屋はシングルベッドが2台置かれて、 エキストラ用のソファーベッドが海を見て寝転ぶことができるように窓際に置かれています。 このソファーの配置がのんびり感、ゆったり感を演出してくれています。そしてその景色もまた素晴らしいものです。
 

【部屋からの眺望 芝生に草間彌生の「南瓜」が見える】
 
 風呂は宿の宣伝文句では「インフィニティ温泉」と称して内湯、露天風呂、人口池、 そして海がインフィニティ(無限大)に繋がっている様に見えます。湯船の淵からお湯が外に溢れ出ているように見え、 湯に浸かると海と一体化したような気分になります。残念ながら写真を撮ることはできませんでした。
 湯上り処には生ビール、ジュース、アイスキャンデーが置かれています。そして驚いたことはこれら 全てが無料サービスになっています。

 この宿のレストランの雰囲気も上々で、海を連想させるように天井や壁は曲線を上手く使って 白い漆喰の壁や柱が波のように見えるのがとても印象的です。
 食べ放題のビュッフェレストランには専任の料理人による天ぷらやステーキはもちろんのこと、 志摩特産の牡蠣、松茸ご飯もあります。そしてアイスクリームは有名なハーゲンダッツでした。
 

【ビュッフェレストランの料理】
 
 夜は星空テラスに星を見に行きましたが残念ながら曇りで星は見えませんでした。 ここには足湯があるので本来ならば星空を見ながら足湯に浸かることができます。
 夜も遅くなりラウンジでは夜食のサービスがあり、ハーフサイズのラーメンが無料で提供されています。 このラウンジでは来館した時にウエルカムドリンクの提供がありました。
 

■日本を代表するリゾートホテル


 北海道の占冠村にある「星野リゾート トマム」に泊まってきました。 星野リゾートの宿はこの他にも行ったことがありますが、最近行ったのでここを紹介します。
 私はこの宿についてツインタワーの宿ということだけ知っていましたが、 そもそもそこから認識が違っていました。実際に行って分かったことは実はツインタワーは2揃いあり、 都合4棟のタワーが建っていました。
 

【2揃いのツインタワー】
 
 このホテルのお客は若者が中心で、小さな子供を連れた家族連れも多く見かけます。 高校生の修学旅行の一行も泊まっていました。
 広大な北海道の大自然を舞台に星野リゾートの提供するものはスキー、テニス、トレッキングといったものですが、 それらの定番以外にも多くのアトラクションがあります。
 ロビーの一角で数人のスタッフが打ち合わせをしていました。 それは修学旅行の高校生たちが参加するラフティング(川下り)の事前打ち合わせでした。 私は修学旅行の変貌ぶりに驚きながらも、旅のスタイルが変わりつつあることを肌で感じることになりました。

 その変化の一つが、山の上にある雲海テラスから雲海を見るために早朝4時30分からバスが出るイベントがあります。 ただ宿泊が高層のタワーなので部屋からも見事な雲海も見ることができます。 雲海に朝日が射し込んでタワーが雲海に影を落とすという素晴らしい光景、 そこに赤い炎を見せながら熱気球が上がってきます。この熱気球も雲海を見るアトラクションです。
 

【部屋から見た雲海と熱気球】
 
 レストランはタワーの内部だけでなく敷地内にいくつかのレストランがあり、 夜にはそれらレストランは照明によって幻想的なものに変化します。
 各レストランの間はベンチにもなる木道が敷かれていて、ちょっとくつろぐため椅子も置かれています。 驚いたことはそれら椅子の前には焚き火があり、それも一カ所ではなく何カ所もあります。 北海道は夜になると結構寒いので暖をとりながら焚火の炎を見ての語らいができ、 最近流行りのグランピング(至れり尽くせりの高級キャンプ)気分を味わえます。 この演出には恐れ入ってしまいました。
 

【森の中にあるレストランと照明】
 

【レストランの前で焚火を楽しむお客たち】
 
 今回紹介した宿は、最近私が実際に行ったものです。
個々の旅行については法師温泉以外「旅のチカラ研究所」のホームページで旅行記として公開しております。 「洞爺湖トマムの旅2020」、「西山温泉の旅2020」、「紀伊半島の旅2019」、「東関東の旅2019」、 「琵琶湖・北陸の旅2019」の5作です。

こちらの方も是非ご覧ください
 
Copyright © 2019 パナソニック電送社友会 All rights reserved.
会員便り トップに戻る