この船は、本来は105日間の北回り世界1周の旅ですが、昨年7月時点で、末期膵臓がんで闘病中の伴侶が小康状態であったことから、無理のない形で、一度に多くの場所を周遊できるように、欧州だけ切り売りしてもらう形で特別のアレンジをしてもらいました。練習の意味を込めて、11月末には1週間の中国の揚子江クルーズも予約しました。
ところが、昨年9月の容体急変を受けて二つともキャンセルせざるを得なくなりました。11月1日の死亡を経て、紆余曲折ありましたが、「行けなかった伴侶の鎮魂」と「私自身の気持ちにけじめをつけて再出発する旅」の位置づけで、私一人で乗ることにしました。
伴侶の容体を考えて無理のない日程にしたつもりでしたが、実際に乗ってみると、寄港地で下船してバスで巡る観光は、そのほとんどが、体力的に無理があると認識しました。体調によっては、途中下船もありえたと感じています。
船内には、様々な事情を抱えた単身者が多数乗船しています。私と似た境遇の方もおられ、心に傷を負い、伴侶の思い出を心に刻んで乗っておられます。悲しみを経験したのは私一人ではないのだと知るにつけ、心が洗われる思いです。
5月26日の朝食で隣り合った73歳の男性は、5年前に死に別れたそうであり、ペンダントに遺骨を入れ、小さな写真を携帯しておられるとのことでした。奥さんと死別した男性がほかにも3人乗船しているとのことでした。
私が知り合った範囲でも、3人おられます。もう一人は、5年間別居した挙句、奥さんから離婚を突き付けられた男性です。この船には様々な人生模様があります。食堂などで隣り合わせた女性の中にも似たような境遇の人が何人もおられました。 |