会員便り

旧ユーゴスラビア紀行(2)

2019年1月
植木 圭二

   アドリア海を挟んでイタリア半島の対岸にあるスロベニア、セルビア、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、モンテネグロの旧ユーゴスラビアの5カ国に行ってきました。どの国も自然の美と昔のヨーロッパの面影を色濃く残すと共に、残念ながら近年の内戦の傷跡も残していました。

  今回は、内戦の激しかったボスニアヘルツェゴビナとセルビアを紹介します。

 

■サラエボ

  ボスニアヘルツェゴビナ共和国の首都サラエボにはこの街を世界的に有名にした喫茶店があります。その喫茶店は現在博物館になっています。

1914年6月28日にオーストリア・ハンガリー帝国、いわゆるハプスブルク家の皇太子夫妻が暗殺された事件がきっかけとなって第一次世界大戦が始まりました。博物館に入館せずとも壁に当時の写真を見ることができます。

暗殺はいくつかの偶然が重なって発生しました。運転手が道を間違えたのでそれをわざわざ引き返し、車列の後続車が手りゅう弾の爆弾テロにあい、皇太子夫妻は市庁舎に一旦避難したのにお見舞いに戻ったところ、この喫茶店でサンドウィッチを食べていた暗殺団のひとりが皇太子夫妻の通過を偶然に知り、喫茶店の前で犯行におよび射殺に成功したというものです。

 
   サラエボは複雑な街で、街の真ん中に東西を分ける印が道路にあります。

 ここを境に街の雰囲気は一変します。東側はイスラム教のモスクがあり、西側にはカトリックの教会、セルビア正教の教会、さらにユダヤ教の会堂まであって、いろいろな宗教施設を見ることができます。
 
 
 

 サラエボの歴史は、ローマ帝国の支配地域にスラブ人が入ってきて街ができ、15世紀にオスマン帝国に支配され、その後はオーストリア・ハンガリー帝国に支配されました。第二次世界大戦中はナチスドイツに支配され、その後にユーゴスラビアという国ができました。

 ユーゴスラビアを表す有名な言葉があります。「7つの周辺国との国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家」というもので、複雑怪奇な国の状況を非常に良く表しています。

 1984年には冬季オリンピックがサラエボで開催されましたが、1992年から内戦が始まり1996年に終わったばかりです。その内戦という独立戦争によってユーゴスラビアは無くなりました。

 内戦ではたくさんの銃弾が降りそそいだので、土産物として面白いものがありました。火薬は入っていませんが20mm機関銃の銃弾を加工したものです。真鍮の筒になっている銃弾の後部に切りかきを入れて栓抜きにしたもの、そしてボールペンの芯を差し込み外側に模様を彫刻しクリップを付けた銃弾ボールペンです。

 
 

■モスタル

  サラエボからアドレア海に向かう途中の渓谷にモスタルという世界遺産の街があります。モスタルという地名はボスニア語で「橋の守り人」という意味で、ここには16世紀に造られた美しいアーチ状の古い石橋があります。

  ところがこの石橋は内戦によって1993年に完全に破壊され、現在見ている石橋は2004年に修復再生されたものです。 川に落ちた一つ一つ全ての石橋の破片を拾い集めて組み立てていく作業はジグゾーパズルを立体化したような途方もないものです。破片が無い場合は石切場から同じ年代の石を切り出し埋め込むという大変な作業をこなしました。

 だから「DON’T FORGET ’93」という文言が橋の渡り口に書かれています。

 
 

■ベオグラード

  ベオグラードはセルビア共和国の首都で、旧ユーゴスラビアの首都でもありました。ドナウ川とその支流のサヴァ川の合流する地域にあり、その合流地点を見下ろす高台にベオグラード要塞があります。

 戦火が途絶えない地域なので要塞の役割は大きく、城壁は幾重にもなっていて支配者が代わると強化するので進化の跡が見てとれます。

 要塞の門をくぐり抜けると大砲、戦車、ミサイルなど兵器が展示されています。朽ち果てたレンガの城壁との対比がそれら兵器というものが如何に虚しいかを訴えているように感じられます。

 
 
 

 同じくベオグラードにある聖サヴァ教会は1935年から建設しており、昨年地下ホールができたばかりで1階のホールは内装工事中なので現在は地下ホールのみを公開しています。

 地下ホールは見事な仕上がりで黄金の間に壁画がたくさん書かれています。私たちは古い教会はともかくも、真新しい教会を見る機会は滅多にありません。とても新鮮な感じがします。

 それにしてもこの教会はいつ完成するのでしょうか。あと17年で100年になります。

 
 
   
 

 これらの詳細な旅行記は旅のチカラ研究所のHPに公開しています。是非ご覧ください。

   
 
 

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