会員便り

12日間日本一周便り

2018年7月
植木 圭二

 フルムーン夫婦グリーンパスを使って12日間日本一周をしてきました。この切符はJR全線の列車が新幹線、グリーン車を含め乗り放題で夫婦二人で12万円台と大変お得なものです。
■1日目
 東京発の上越新幹線に乗り、新潟で乗り換え日本海を北上してします。さすがに米どころで田植えを終えたばかりの田んぼが延々と続いています。余目からは新庄に向かう車窓は最上川が並走してくれます。新庄で山形新幹線に乗り換えて、銀山温泉に向かいます。
 銀山温泉は尾花沢にあり、尾花沢といえば銀山が有名で、そこから銀山温泉が生まれました。小さな川の両側にレトロな温泉宿が並び建っている風景が雑誌などにある有名な風景です。そしてこの温泉街はガス灯に灯がともる夕暮れから夜の景色がベストショットになります。
■2日目

 銀山温泉から山形新幹線で福島まで戻り、東北新幹線で三沢にある「星野リゾート青森屋」に行きます。ここは言わずと知れた高級リゾートですが、決して期待を裏切らない、むしろ期待以上の宿です。

 とにかくこの施設は広いです。本館と東館、西館があり、それらの真ん中の地下には多目的な広場が広がっていて、通常の旅館でいえばロビーの機能を果たしています。だからこの広場には酒場、売店、ステージ、青森ねぶた、屋台などもあります。
そして敷地内には大きな公園があり、真ん中に大きな池があってこの池を中心にいろいろな建物が建っています。神社や迎賓館、レストラン、足湯など様々ですが、池が広いのでそれらの建物は点在しているに過ぎません。池の周りを一周するのに歩いて30分程かかります。

  風呂もちろん温泉で、内湯は青森ヒバで出来ていてこの香りだけで満足してしまいます。露天風呂の浴槽は大きな池の中にあり、出島のようにせり出しています。浴槽は淵が細く、高さが池から30cm程なので一見すると池と一体になっているかに見えます。この風呂の名称は「浮湯」といい、一言で言い表しているからさすがです。

 夕食はディナーショーを予約して、食事と青森県のお祭を堪能できます。食事は地元食材のホタテを中心に大変美味しく頂きます。セイロ5段蒸しという料理が出てきましたがなかなか面白いです。
ショーは津軽三味線に始まり青森各地の祭り囃子の演奏が続き、太鼓に笛と鐘というシンプルなものだが、その迫力に圧倒されます。最後は青森ねぶた祭の囃子で盛り上がり、観客をハネトと呼ばれる踊り手にして青森ねぶた祭の体験型リゾートに仕立てています。

 朝は清々しい中でラジオ体操です。ただこのラジオ体操はちょっと変わっていて、津軽三味線の伴奏で津軽弁のリードで行われます。これもよく考えたアイデアだなと感心します。
■3日目
 新青森から北海道新幹線に乗り、函館新北斗まで1時間で津軽海峡を渡ります。青函トンネルの通過はわずか25分です。そして在来線に乗り換え札幌を目指します。

  本日は海外クルーズで知り合った人の別荘に泊めてもらいます。彼の肩書は「男の料理研究家」です。玄関から入りリビングルームに通されて目の前に広がる庭を見渡すと、そこは別の世界が広がっており、芝生の庭があり、おしゃれなベンチやピザ窯、バラ棚や東屋、池、その向こうには白樺などの木が生い茂っています。

 期待の食事は、北海道ならではの食材をふんだんに使って手間をかけた料理が並びます。北海道近海で獲れた魚の刺身、ひと手間いれて昆布でしめています。茹でたタケノコやアスパラ、ゆり根の茶わん蒸し、ネギ入り厚焼き卵、ホッケ焼きなどです。その中でもここまでやるのかというのがカラスミです。カラスミはボラの卵の燻製で長崎の名物ですが、それを自分で作るというのは凄いです。さすがに料理研究家の食材の選択、味も含めて素晴らしい。  別荘と手料理にもてなされ、4人の宴会は夜遅くまで続きました。
■4日目

 普通列車で札幌から余市にあるニッカウヰスキーの蒸留所に行きます。余市のこの蒸留所がニッカウヰスキー発祥の地で、NHKのドラマ「マッサン」で全国的に有名になった場所です。

  ドラマは日本で初めてスコッチウイスキーを作った「竹鶴政孝」の実話をもとにしています。余市の気候がスコットランドに似ており、一年を通じて低温で高湿のこの地がウイスキー作りに向いているというのでこの地で創業したそうです。
事前に案内ガイドツアーを申し込んであったので、ウイスキー作りの工程とテレビ撮影に使われた現場を効率よく見学させてもらいました。蒸留工程ではホットスチルと呼ばれる蒸留装置が実際に稼働しており、従業員が窯に石炭をくべる時に窯の熱気が最前列にいる私のところに伝わってきて実際に稼働している工場だということを実感します。

  最後はお決まりの試飲コーナーで。鉄道旅のメリットを活かし「シングルモルト余市」を試飲しましたが、やはり美味しい。昨今のウイスキー人気が高まっているというのを実感します。

 この日の夜は、長万部温泉です。ここの温泉は高張性弱アルカリ塩化泉で、少ししょっぱくてヌルヌルしていますが、体が冷めにくい実に気持ち良い温泉です。

  食事は刺身や煮魚も全て地元のものを使用して比較的シンプルなものですがアワビと毛ガニは存在感を示しています。温泉宿で出てくる料理と言えば地元のものというより品数だけは多いというのが相場ですが。この宿は北海道に来たという気分がたっぷり味わえます。

■5日目
 長万部を出て再び青森に戻り、五能線を走る列車「リゾートしらかみ」に乗ります。快速列車です全席指定で予約を取るのが難しい列車です。 5時間乗りっぱなしの列車旅ですが、車内はあか抜けており座席も広い、ビュッフェカーもあり飲食物、土産物も買えます。この地方の民話を津軽弁で語ってくれる「語りべ」の車内実演もありますので車内だけでも充分に楽しめます。

  沿線の景色も素晴らしく、よくぞこんなところに鉄道を通したものだという場所を列車は進んでいきます。とにかく素晴らしい景色が続き、その中でも見どころに列車がさしかかると速度を落として、車掌がいろいろな説明をしてくれます。
千畳敷という海沿いの景勝地に駅があり、15分の停車をするので是非外に出て実際に歩いて観てきて下さいという車内アナウンスが流れます。観光列車として至れり尽くせりです。

■6日目

 秋田新幹線で大宮まで戻り、大宮から北陸新幹線で北陸に行きます。
富山では名物のブラックラーメンという真っ黒い醤油に麺が浮かぶラーメンを頂きます。相当にしょっぱいのでご飯も一緒に注文することが当たり前のようです。

  金沢では「ふらっとバス」という市内循環バスに乗って市内を3時間程ふらっと観光します。このバスは地元民の足で、1回の乗車が100円で市内を4つのルートで循環しており、どのルートも30分程です。地元目線で旅する方にはお勧めです。

 宿泊は福井、ここを宿泊地にした目的はソースカツ丼を味わうためです。ソースカツ丼評論家を自負する私にとって福井の「ヨーロッパ軒」は絶対にはずせない店です。それはこの店がソースカツ丼発祥の店だからです。
■7日目
 福井から特急で大阪へ、そして山陽新幹線に乗り、岡山から瀬戸大橋を渡ります。
四国に入って列車の揺れを顕著に感じます。縦揺れと横揺れはの中、きれいな瀬戸内海を右手に見ながら進んで行きます。青い海の沖合にはいくつもの島々が見え、それは低い山々が連なっているように見ます。そんな景色に馴染んだ頃に列車は松山に到着します。

  松山と言えば道後温泉が有名で、古風な建物で有名なあの「道後温泉本館」入ります。パンフレットには3000年の歴史を持ち日本最古の温泉と書かれています。3000年というと日本の起源の神話の時代よりも古いことになります。事の真偽は別としても古いことは確かなようで、太古の昔を想像すると温泉も一味違います。

 
■8日目
 本日は長崎を目指します。函館と神戸と合わせて日本三大夜景の一つと数えられているので夜景を期待しての宿泊です。
この長崎の宿最大のポイントは、夜景を屋上にある露天風呂から見ることができます。さらに驚くことは風呂のお湯が夜景に向かって溢れ出ているように見えのでシンガポールのマリーナベイ・サンズ・ホテルの屋上のプールのように水が溢れ出で空中に浮いているかのように感じることです。
 そしてもう一つ、長崎湾には10万トンクラスの客船が毎日寄港しているようで、ホテルのロビーには寄港予定の客船名が掲げられています。
 私たち夫婦はここ2年間だけで地球一周、オセアニアクルーズと通算160日も大型客船に乗っていたので、陸地のホテルから大型客船を見るというのはあまり経験がないですが、改めて陸地側から見ていると、停泊しているだけで港のステータスが上がったような気持になります。
やはり港には船が似合う。船旅は今後も増えていく予感がします。
 
■9日目
 長崎の沖合には世界遺産登録された軍艦島があり、本日はその上陸ツアーに参加します。
港を出て程なくすると造船所がいくつか見えてきて、その施設の一つで戦艦武蔵が建造され、その戦艦武蔵に島の姿が似ているので軍艦島と呼ばれるようになったようです。

 この島は江戸時代の終わり頃から石炭を掘り始め明治になって採掘は本格化して次第に地下に掘り進み海底採掘の拠点となり、そのため多くの人間がそこに集まり家族と一緒に住む住宅や病院、学校が建てられて街に進化したという歴史です。
島もその度に埋め立てられ、面積は最初の3倍になり最終的には480m×160mになりますが、石炭のゴミをコンクリートで固められたものなので殺風景この上ない人工島です。

  島の人口は最盛期には5300人にもなり、人口密度は当時ダントツの日本一です。
その後は石炭産業が衰退し、1974年に炭鉱閉鎖、全島民が転居し廃墟と化し今に至っています。現在は廃墟化への進行は止められずに上陸・見物には厳しい規制がしかれています。

 上陸するとその異様な光景にただ驚くばかりです。炭鉱というよりも廃墟の要塞か刑務所という表現の方が似合っています。波が強く当たるので島は高く頑丈な堤防で囲まれていますが、波の激しい攻撃にさらされてコンクリートの堤防が倒されています。
大正初めに日本で最初に建てられたという鉄筋コンクリートの7階建ての建物は、潮と太陽によって朽ち果て、錆びた鉄筋がむき出しになっているのが印象的で、わずか40年くらいでここまでの廃墟になるのか。自然の力の前には人間の無力さを痛感します。

 長崎から鹿児島まで新幹線に乗り継いで3時間程です。九州新幹線に乗って気が付いたことは車内放送が日本語、英語、中国語に続いて韓国語が加わり、朝鮮半島が近くに感じらます。
夜は鹿児島の友人夫妻と一杯飲みます。この友人はOAシステム事業部で私と一緒に開発をしていた技術者ですが、25年ぶりの再会です。
 
■10日目
 鹿児島から宮崎、そして別府へと進む車窓は山と海とトンネルと全く飽きません。大分から特急ソニックに乗り換えると、この列車は名前からして近代的な印象を受ける列車ですが、このグリーン車は未来的感覚が漂っています。運転席と客席の間に全て見渡せる展望用の丸いベンチが有ってとても面白い。特急のそれもグリーン車はとても楽しい旅を演出してくれます。
 本日は別府温泉で宿をとる。私たちが泊まっている大きなホテルの隣の敷地にもホテル建設中です。それがあの星野リゾートだというから面白いです。

  別府は温泉遊園地やシンクロを使ったプロモーションビデオでも注目を集めており、街は至って元気、この街はこれからもっと面白くなる予感がします。

 
■11日目

 昨年世界遺産登録された福岡県の宗像大社に立ち寄ります。神宿る島として沖ノ島が一躍有名になりましたが、沖ノ島の沖津宮、大島の中津宮、そしてここ九州本土の辺津宮(へつぐう)の3つがセットで宗像大社です。
沖ノ島は厳しい立ち入り制限がされている島で、世界遺産登録と同時に自然と信仰の保護ために今後一般人の入島を一切禁止されたのでさらに神秘的なものになっていくでしょう。

  今までは世界遺産登録されると必ず多くの人が押し寄せて破壊されるという悲劇を生んでいたことからすると、だいぶ学習したのだろうと感じます。
宗像大社(辺津宮)の大きな駐車場の前の展示館では、沖ノ島を紹介する3Dビデオを放映していますので、ここに行くことをお勧めします。

 福岡ではパナソニックコミュニケーションズ時代の友人宅に泊めてもらい、一日前倒しですが今回の日本一周の旅に打ち上げです。

 
■12日目
 博多南駅から博多駅に新幹線で向かいます。この路線は鉄道オタクか、地元民でないと知らないようです。博多とその車両基地である博多南とを結ぶ路線で、地元の人たちのためにその回送線を活用して旅客線化して博多南駅を作ったものなので特急券なしで乗車できます。
博多からは新幹線「ひかり」に乗り帰宅です。
 
この旅の詳細は旅のチカラ研究所のHPをご覧ください。また日程表を載せておきます。
 
 

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